秋の名前がついた花たち
「秋色アジサイは、特別な品種名ではなく、通常のアジサイと同じものなんです。開花時期である初夏に咲いた花を摘まずに残しておくと、気温の変化などによって時間をかけてアンティークカラーの色あいに変化していきます。それを通称で秋色アジサイと呼んでいるんですよ」
最近、花屋さんで見かけることも多いアンティークカラーの秋色アジサイを散策中に見つけた佐藤さん。
「花屋さんでは今、秋色アジサイのように少し落ち着いた色合いで、ドライっぽい渋めのお花が流行っています。バラやカーネーション、ダリアなどのメジャーな花も、一重咲きや花が小さなものなどよりナチュラルな品種も増えてきているので、ブームは野草に近づいているのかもしれないです(笑)」
続けて佐藤さんが見つけたのは、花びらの大きさがまばらで可愛らしいシュウメイギク。こちらも秋の風情を感じさせる優雅な花としてファンが多いそう。
「シュウメイギクは、秋明菊と書きますが、キク科ではなくアネモネの仲間なんです。花の真ん中にあるしべが大きく可愛らしいのはアネモネと同じです。秋を告げる代表的な花の一つで、季節になると、あちこちで白やピンクの花が群れ咲く様子が見られます」
バラといえば春や初夏のイメージが強いかもしれませんが、秋に咲く「秋バラ」も人気があります。この時期に咲くバラの一部を神代植物公園の写真をお借りしてご紹介します。
「バラの花って、春や初夏に比べて秋のほうがゆっくりと咲き進んでいきます。そのため、花びらが小ぶりになったり、香りがあるものはより濃厚になったりするのが秋バラの特長と言われています。いわゆる甘さと華やかさをあわせ持つ、古典的なバラの香りを感じられるダマスク・クラシック系から、フルーツの香りを楽しめる系統もあったりします」
「地域によって呼び方が異なる野草もありますし、秋色アジサイや秋バラのように、学名でなく通称名のほうが覚えやすかったりするので、それで覚えるのもありだと思います」
蝉の声が鈴虫の音に変わると、辺りの落葉樹の葉色は、赤や黄に色づき、木々たちは冬支度を始めます。そんな中でも、秋だけにしか咲かない花や夏から咲き続ける花、四季咲きの花など、秋を彩る草花は身近にいっぱいあることがわかりました。また、街中で見かける野草であっても、四季折々の風物詩を知れば、季節の移ろいを感じさせてくれるもの。
「そうですね。これだけ知っていれば、という四季の代表的な野草をあげるなら、春はスミレ、夏はツユクサ、秋はハギ、冬はフクジュソウです。見た目も名前も覚えやすいと思います」
2021.10.16(土)
文=大嶋律子(Giraffe)
撮影=榎本麻美
写真提供=神代植物公園