こんな風に老いていく自分を面白がって観察したり、向き合ったりを続けていたら、いつの間にか、その恐怖を乗り越えられていたように思う。
60代の今は、「どう見られたって構わない」という境地にたどり着いたような気がする。映画のスクリーンに、このシワが刻まれた顔がドーンと映ろうと、ノーメイクの顔や、すごい形相の自分が映ろうと、全く気にならなくなった。
むしろ、それが監督や作品にとって好ましいものならば幸せだ。心の底からそう思えるようになったのは、やはり、希林さんのおかげに他ならない。これからも演者としてはもちろん、1人の女性としても、しなやかに付き合っていきたいと思う。
とはいっても、グレーヘアーに出来るのはいつだろうと悩んでしまうのだが。
結婚のこと
中学校から厳格な女子校に通っていて、16歳で芸能界に入った私は、それまで恋と呼べるほどの感情を味わったことがなかったように思う。
女子高生の頃は、周辺の有名男子校の男の子と友だちの紹介で会ったり、通学途中や文化祭で交流を持ったりするのが楽しかったくらい。
友だちは、慶應ボーイが好きな子が多かったけど、私はお坊ちゃまなイメージの慶應ボーイよりも、断然、駒場東大派に名乗りを挙げていた。当時から無頼でちょっと不良っぽい人が好きだったのだ。テレビや映画で観ていたスターも、当時は、ジュリーこと沢田研二派とショーケンこと萩原健一派に人気が二分されていたけれど、私は断然、ヤンチャで男っぽいショーケン派。
ショーケンはすごく男っぽくて、ちょっと面倒臭いくらい人間味があって、チャーミングでかっこよかった。
高校を辞めて芸能界に入ってからも、恋なんて遠い存在だった。当時の芸能界は今よりもずっと閉鎖的で厳しかったし、さらにはメールやSNSなどのツールもないから、現場で気になる人ができても想いを伝え合う術すべもなかったから。
吉田拓郎との出会い
吉田拓郎さんに出会ったのは、19歳の時。仕事は相変わらず忙しく、刺激的な毎日を楽しんでもいたけれど、一方では言い知れぬ寂しさもあった。同じ年頃の友だちが楽しんでいることや味わっているものが、私には1つも得られないと感じていた。
2021.10.09(土)
文=文藝出版局