「なんか今日は気圧のせいでボーッとするなぁ……」近年、気圧からくる体の不調を訴える人が増えてきている。特にSNSなどをよく利用する人は、こんな言葉を目にすることも多いのではないだろうか。
こうした不調を「気のせい」などと一蹴する人も少なくないが、実際のところ、気圧をはじめとした「気象変化」によって、人体にはどれだけの影響が及ぼされているのだろうか。
「気象が変化することで、私たちの身体にもさまざまな影響が出てきます。その結果体調不良を引き起こす。最近になってようやくそのことが一般的になってきました」
こう語るのは「気象病」と呼ばれる病気について、同症状の診療や臨床を数多く行っている「せたがや内科・神経内科クリニック」院長の久手堅 司医師。
近年注目を集めているという気象病とはどういうものなのか、また、同病とその原因を取り巻く認知の変遷について解説してもらった。
病院外来の枠組みに捉われない、つぶさな臨床の果てに見えてきた不調の原因“気象”
全国でも珍しい「気象病・天気病外来」という特殊外来を設けている「せたがや内科・神経内科クリニック」。まずは、久手堅医師がこうした外来を設けるまでの経緯について伺った。(以下、「 」内、久手堅医師)
「元々、私の専門は脳神経内科といって、頭痛・めまい・痺れ・脳卒中などを中心に診るところでした。開業するまでは、急性期の脳血管障害など命に関わる病気を診ることが多かったです。2013年に『せたがや内科・神経内科クリニック』を開業してから患者さんの症状で一番多かったのは頭痛で、『緊張型頭痛』や『片頭痛』などで、直接的に命に関わるものではありませんでした。
これらの症状を診ていくなかで、『頭痛外来』に訪れた患者さんを『肩こり・首こり外来』で診察することで解決したケースが多くありました。例えば、片頭痛と断定せず肩こりを改善する(緊張型頭痛によくみられる症状)と頭痛も改善するなどです。そんな横断的な臨床を心がけながら数多くの症例を診るうちに、片頭痛やめまいを抱える患者さんがよく“天気が悪いとき”“雨が降り出す前”に症状が強くなる傾向が多いことに気がつきました。
患者さんの多くは、めまいや耳鳴り、耳閉塞感などの症状も伴っており、耳鼻科を訪れても病名が判明しない場合が多かったです。頭痛とめまいということから、天気によって平衡感覚を司る『内耳』が影響を受けているのでは? と思い始めました。それから、実際に患者さんの多くが天候の影響を受けていたことが判明したため、患者さんが来院しやすいように間口を広くしようと『気象病・天気病外来』を新しく設けました」
2021.10.12(火)
文=TND幽介〈A4studio〉