ウイルスやストレスに対抗する力、それが免疫力。体に忍び寄る異物と戦うためには欠かせないシステム。

 体、心、肌を健やかに保つために、今こそ免疫の基本を知ろう。


免疫力に最も重要なのは食事。足りない分はサプリメントでもOK

 「いつもとは違うさまざまな不調を感じたときは、免疫力は下がっていると思った方がいい」と皮膚科医の山崎まいこ先生。

 その免疫と大きく関わっているのが腸。

「小腸の絨毛には、体中の免疫細胞の約7割が集まり、血液に乗って全身に運ばれます。最近の研究では、インフルエンザなどに対する免疫力の高さは、小腸の働きと密接に関係していることがわかっています」(山崎先生)

 だからこそ、食事は最も重要。忙しい日々で不足しがちな栄養素は、サプリメントをうまく活用して、効率よく免疫力を高めよう。

そもそも免疫とは

◆STAGE1 防御

 体には、まずは病原体や外的刺激を内に入れないようにする防御機能が備わっている。

「例えば肌のバリア機能や、鼻毛やまつ毛、粘膜も防御の役割を果たしています。粘膜で主に働くのが『IgA抗体』。侵入してきた病原体にくっついて、戦います。免疫グロブリンとも呼ばれるたんぱく質で、これが低下すると病気にかかりやすくなります」(山崎先生)。

◆STAGE2 戦う

 第一段階で防ぎきれなかった病原体や細菌に対して攻撃するのが、第二段階。

「もともと体内に存在する自然免疫と、ワクチン接種などで後天的にできてくる獲得免疫があります」(山崎先生)。

 獲得免疫はインフルエンザなどの予防接種が代表的で、体内に抗体をつくり、病原体を捕らえて排除するよう働きかける。獲得免疫維持のためにも自然免疫が低下しないよう注意する必要が。

獲得免疫

出生後、病原体やウイルスなどの異物と接して獲得した抗体が戦うこと。主に働くのは、T細胞やB細胞などのリンパ球。「抗体を持つことで、同じ異物が2回目に入ってきたときにスムーズに戦えるという仕組みです」(山崎先生)。


自然免疫

体にもともと備わっている免疫のこと。常に体を監視し、侵入物に対していち早く攻撃する。白血球に含まれるマクロファージやナチュラルキラー(NK)細胞が代表的。病原体やウイルスを、食べて、捨てて退治する。

免疫が下がるとどうなるのか

「免疫力が下がると、ストレスや外部刺激に対する抵抗力が落ち、体調が悪いほうに傾いてしまいます。また、肌が過敏になったり、くすみやシミもできやすくなります」(山崎先生)

 疲れやすく風邪やウイルスに感染しやすくなるので注意が必要だ。

 免疫力が下がっているサインの代表例は、眠りが浅くなること。ほかにも、ちょっとした不調の回復が遅いなど、さまざまだ。

「生活のリズムが乱れがちな人、運動不足の人、食事の栄養バランスが悪い人は、免疫力が下がっていると考えられます」(山崎先生)。

最近笑っていますか? 心の底から笑うと免疫力アップ!

笑うことで、免疫に関わる細胞が活性化するといわれている。「笑えるということは、心の余裕があるということ。つまり、リラックスしているとき。リラックスすると深く呼吸することができ、体の巡りも高まります。ストレスが緩和されることで、心の健康にもつながり、結果的に免疫力がアップします」(山崎先生)。

2020.11.10(火)
Text=Noriko Masumoto(alto)
Photographs=Hirofumi Kamaya
Illustrations=Tokuhiro Kanoh

CREA 2020年11・12月合併号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

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