心をフラットに保つために 3・3・3の法則とは

「防災の備えや手段はいろいろあります。災害時に何が大事かといえば、まず心をフラットにすることなんですよね。慌てたり動揺したりすると、絶対に判断を間違え、リスクにつながりますから」

 そう語る辻さんが教えてくれたのが、心を落ち着かせるための「3・3・3の法則」です。

[3・3・3の法則]

◆3秒、嗅ぐ
好みのアロマオイルやいつも使っている香水など、これがあれば気持ちが落ち着くという香りを3秒嗅いでみましょう。

◆3分、触る
触っていて心地がよく、リラックスできるものはありませんか? 柔らかいタオルや小さなぬいぐるみなど、安心できる手触りのものに3分触れてみましょう。「二の腕のやわらかいところという人もいますよ!(笑)」と辻さん。

◆30分、眺める
オフィス避難で何もすることがなく、不安ばかりが募る時は、何か心が穏やかになるものを30分眺めましょう。推しの俳優の写真集、好きな画集や詩集、漫画やレシピ本でもOK。ただし、電力を温存するため、スマートフォンやPCで動画を見るのは控えましょう。

 ポイントは、普段から「ラベンダーの香りで気持ちが落ち着いた」といったような成功体験を作っておくこと。成功体験を重ねるうちに、脳がそれを記憶して、有事にも同じルーティンで気持ちを整えられるようになります。

 非常時だからこそ落ち着いて行動するために、自分のお気に入りのアイテムを見つけ、オフィスに置いておいたり、移動時に携帯するようにしておくとよいでしょう。

 また、オフィス避難が続いてスキンケアやメイクができなくなると、それだけで気分も塞ぎがち。いざという時のため、簡単なメイクアイテムやスキンケアのサンプルなどをオフィスに用意しておくのもおすすめです。保湿クリームはメイク落としとしても使えますし、色つきリップクリームがあれば乾燥対策にもなり、顔色も明るくなります。

「鏡を見た時に顔色が悪いと、それだけで心が沈みます。リップ一つで、自分も周囲の人も明るい気持ちになり、ストレス軽減に役立ちますよ」

 いざという時の“減災”のために大切なのは、落ち着いて前向きな行動をとること。それには、その日に備えて気持ちも環境もできるだけ整えておくことが必要です。身近なところからすぐに取り入れられるポジティブなオフィス防災、ぜひ始めてみてください。

辻 直美(つじ・なおみ)

国際災害レスキューナース、一般社団法人育母塾代表理事。国境なき医師団の活動で上海に赴任し、医療支援を実施。帰国後、看護師として活動中に阪神・淡路大震災を経験。それを機に災害医療に目覚め、JMTDR(国際緊急援助隊医療チーム)にて救命救急災害レスキューナースとして活動。現在はフリーランスのナースとして国内での講演と防災教育や被災地での活動を行っている。著書に『レスキューナースが教える プチプラ防災』(扶桑社)、『レスキューナースが教える 新型コロナ×防災マニュアル』(扶桑社)など。

2021.09.30(木)
取材・文=張替裕子(giraffe)