潜伏キリシタンの250年を守った上五島

 地図を見ると、十字架の形をイメージさせる中通島を中心とした上五島には29もの教会があります。

 起伏に富んだ山がちの地形で、かつては道もなく行き来がしづらかった上五島。そんな悪条件を逆手にとって、江戸時代、多くの潜伏キリシタンが移り住みました。禁教令の弾圧の中、島民たちは信仰を支えに質素な暮らしを営み、250年間、身を潜めて祈りを続けてきました。

 そんな頭ヶ島の4つの集落は、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」として世界遺産に登録されています。

 中通島から頭ヶ島の集落へ。真っ赤な鉄橋を渡り、頭ヶ島天主堂をたずねました。

 建築家・鉄川與助が手掛けた、頭ヶ島天主堂は珍しい石造りの堅牢な外観です。石材はロクロ島や仏崎から切り出し、運ぶ途上、事故で島民が命を落とすこともあったとか。

 聖堂内はうってかわって、柱や天井、いたるところにやさしい色合いのバラやゆりの花を彫って装飾されています。

 さらに聖堂内を彩る生花を島民が畑で育て、交代で飾っていたそう。だから「台風がやってくると、花がなくなってしまうから大変でした」と、ガイドをしてくれた女性が語ってくれました。頭ヶ島天主堂はその端々から、島民の信仰の篤さが伝わってきます。

2021.09.11(土)
文・撮影=古関千恵子