“しゃしん絵本”とは何なのか?
――タイトルの『たいせつなぎゅうにゅう』に込めた意味というのは。
牛乳は仔牛が生まれてすぐに飲む栄養満点の飲み物で、元気に育つためにとても大切なもの。そして酪農家が大切に育てた牛から牛乳をいただいて、さらにたくさんの人が関わったことによって、私たちが飲むことができるんです。多くの牛や人の想いが詰まっていて、みんながその想いを大切に繋げながら僕らのもとに届けてくれているんだよということを伝えたくて、『たいせつなぎゅうにゅう』と付けました。
――牛や牛乳を扱っているだけに、なんとなくのんびりと制作できたのかなと考えてしまいがちですが。
たんぽぽ牧場から最後に登場する幼稚園まで、生産、流通、消費すべてが別海町のなかで繋がっていることを、ごまかし無しで撮りたかったんですよ。だから、関わっている団体も場所も数多い。撮影協力していただくために、それぞれに「しゃしん絵本」がどういうものか、『たいせつなぎゅうにゅう』の企画意図がどういうものか、説明をしっかりしないといけなかった。そこがまず大変でしたね。
――参考になる『マグロリレー』があるとしても、「しゃしん絵本って、なんだね?」とは思う方もいるでしょうしね。
そうなんです。あと、『たいせつなぎゅうにゅう』は夜明けの牧場から幼稚園に牛乳が届くまでの1日の流れを追いかけたスタイルになっているんです。なので、日をまたいで撮影した場合、「昨日と同じ服を着てもらえますか?」とお願いすると「なんで?」となってしまう。あと、人や物の向きも揃えないといけないから「昨日はあちらから歩いてきたので、今日も同じようにお願いします」みたいな。そこはストーリーとして破綻のない展開にしないといけなくて。
――たんぽぽ牧場の方が頭に巻いているタオルの色などにも気をつけたわけですか。
ピンクのタオルだったんですけど、途中で白に替わっていた時があって「すいません、ピンクで」とお願いしました。Tシャツの色が違うところもあるんですけど、それは僕の脳内で「汗をかいて途中で替えた」という設定になってます(笑)。
2021.08.25(水)
文=平田裕介