光浦 今思うと倍のお金をもらってもよかったかな。だいぶお金いただいたと思うけど、やっぱりもう倍もらっても全然よかったよなって。人生を振り返るとね(笑)。
「芸人」という肩書きではない
――先日、爆笑問題さんにインタビューする機会がありまして、その時に太田(光)さんがふと「この間、光浦がラジオのゲストに来て」と。「あんなに面白いのに、『めちゃイケ』っていうすごい番組もやってたのに、なんであいつはあんなに自信がないんだ」みたいなお話をされたんです。『50歳になりまして』には、そういう光浦さんがたくさん出てきて、そこに光浦さん自身が一個一個ツッコミを入れている。
光浦 そうね。爆笑さんがそう言ってくれたのは、本当にうれしかったんですよ。でも、『めちゃイケ』はナイナイの番組であって、スタッフもすごい人たちが動いて作った番組であって、私はそこの一構成員なんですよ。爆笑さんみたいに自分の番組を持ったことなんて一度もないからさ。
――その時の『Quick Japan』のインタビューをあらためて読むと、光浦さんは「自分はこの番組にそんなに役に立ってない」みたいなことを話されていました。
光浦 私も思うんだけど、私のことを「芸人」というカテゴリーに入れるから、面白いだ面白くないだって言われちゃって。もう一個別の名前の職業が、私にフィットする職業の名前があったら、たぶん私はもっと堂々と生きていたのかなと思います。
――『50歳になりまして』の中でも「自分は芸人という肩書きではない」と書かれていますよね。芸人という肩書きに違和感はありますか?
光浦 舞台でスタンドマイク一丁で「さあ、笑いを取ってください」と言われたらできないから、やっぱりその職業ではないんだろうなって思う。「おしゃべり」っていう職業があればね(笑)。そうすればフィットしてたのかな。
――肩書き「おしゃべり」。
光浦 私の肩書きが「おしゃべり」だったらもっと自由に生きていたかなぁ。
2021.08.07(土)
文=西澤千央
撮影=鈴木七絵/文藝春秋