人生2個目の職業に向けて「よし、今だ」

――留学を決めたのはその「自由」への第一歩ということでしょうか。先日伊集院(光)さんのラジオで光浦さんが「願望地縛霊」のお話をされていて、あの時ああしていれば……という願望に縛られ続けるのが嫌で、だったら今からそれを叶えていこうと。確かに自分もそういう言い訳たくさんしながら生きてるなって思いました。

光浦 そうね……。あとは、私は職業も特殊だし、ちょっと他の人と違うしね。結婚してないし、子どもも居ないというのは、私の世代だとすごいマイノリティになると思うんですよ。だから、みんなが同じようにできるかどうかは分からない。ただ私は、再就職先じゃないけど……人生、2個目の職業って絶対あると思うんです。

――2個目の職業。

光浦 女性なんか特にね。子どもを産んで子育てして、もう一回復職する人も多い。そこからは死ぬまでやる、そういう2個目の職業って、ザックリするとあるじゃないですか。私は1回目の就職はうまいことヒョロッと行けちゃったんです。何の努力もせずに。だから、今は2個目の職業に向けて、ボチボチね、人生初の就職活動のためのお勉強をしようかなって。

――自らの意思で職業を選ぶということですね。

光浦 そうそう。自分の体力とキャラクターを分かったうえで。

 

――考えてみたら、私も20歳前後で自分のことなど全然わからないまま、何となく最初の仕事に就いた気がします。

光浦 そうですよね。あと、今度は家庭ができちゃうと「私、実はラーメン屋やりたかったの」って言っても「お母さん何言ってるの?」ってなっちゃうでしょ。やっぱり家族がいると大変だけど、私は自分1人だから。くたばっちまうのも自分1人だし、そこは強いですよね。コツコツ貯めてきた貯金もあるし。

「よし、今だ」って思ったんですよ。いろんなことから「よーし、自由になるぞ」っていう。

――1個目の職業が苛烈だったからこそ、自由に価値がありそうです。

2021.08.07(土)
文=西澤千央
撮影=鈴木七絵/文藝春秋