光浦 最近自宅を整理してたら昔の給料明細とか出てきて「あ、こんなにもらってたんだ」と思いつつも、「でも、命削ったわけだからな。もうちょっともらってもよかった」とも思ってます(笑)。命の代償だからなと思って。
――『めちゃイケ』は人生を賭ける番組だったんですね。
光浦 そう。これは私の命の値段かと思って。
――(制作統括の)片岡飛鳥さん自身がそういうふうにやってらっしゃったから。
光浦 でも、どの番組よりお世話になったし、生かしてくれたしね。
腹が立ったときは4回くらい同じトークを
――今回、本を書いたことで、光浦さんの中でどんな変化がありましたか?
光浦 デトックスじゃないけど、次のステップに行けるなと思いました。行こう行こうとはしてたけど、言葉にして、あと、こうやってインタビューを受けてしゃべっているうちに、自分の考えがまとまっていくというか。言葉って面白いね。言っていくとそういうふうになっていくのか、自分がコントロールされていくのか。何でしょうね。
――書いていて「あ、私はそんなこと考えてたんだ」と気づくことも多いですか?
光浦 そう、そうやって自分で自分をだましていくのかもね(笑)。あと、感情がいい意味で乗らなくなるのかもしれない。腹が立ったことも、4回ぐらい同じトークをしていると、もう腹が立たなくなるじゃないですか。私はそれをよくやるんです。腹立った時は、同じトークを、お友達から何から3回ぐらい言うんです。そうすると忘れられる。
――段々とトークが磨かれていく……。
光浦 そうそう。ブラッシュアップされてね。小さく上手にまとめられるし。感情が収まっていくから、より冷静になっていく。文章も最初は怒りで書いていると、便秘気味なグチャグチャな感じになるけど、それをお通じよく整えていくうちに、私も落ち着く。
たぶんセラピーみたいなものじゃないですか。自問自答セラピーじゃないけど、1人2役3役でね。めんどくさいので、普段私は日記とか書かないから、こういうエッセイが何年か分の日記だと思ってます。
2021.08.07(土)
文=西澤千央
撮影=鈴木七絵/文藝春秋