日本の「カワイイ」文化が世界的人気を博すようになって久しい。「Kawaii」という言葉は、どこでも通ずる共通語として定着している。

 その代表格といえば「ハローキティ」。株式会社サンリオが発信する愛らしいキャラクターだ。キティちゃんをあしらった文具などのグッズは、世界中の子どもたちに愛用されている。

 2020年にサンリオが創業60周年を迎えたことを記念して、企業としてのあゆみやキャラクターを一挙紹介する展覧会が企画された。名古屋・松坂屋美術館で開催中の「サンリオ展 ニッポンのカワイイ文化60年史」。

誰の気持ちもやさしくする「カワイイ」を目指す

 マイメロディ、キキ&ララ、ポムポムプリンにシナモロール……。ファンシーギフトメーカー・サンリオが生んだおなじみのキャラクターは、キティちゃん以外にも山のようにある。これまでに商品化した総数は、じつに450を超えるという。

 サンリオのキャラクターは、「カワイイ」路線から一切ブレることがない。創業時に掲げられた方針がきちんと守り継がれているのだ。

 

「カワイイ」と思う気持ちは万国共通

 サンリオの前身となる「山梨シルクセンター」が起ち上がったのは、高度経済成長が始まらんとしていた1960年のこと。そのとき創業者は、こう見通した。

「これからは実用品だけでなく、人々の余暇や遊び心に寄与する商品が求められるはず。ならば、かわいさや感動をもたらすモノやサービスを提供していくことにしよう」

 ここで「カッコいい」や「センスいい」ではなく、「かわいさ」に目をつけているのがポイントだ。「カワイイ」にマトを絞ったのは、それこそが万人の感情を揺さぶるものだとの確信があったから。

 というのも、センスの良し悪しなどの判断には文化や個人差が反映される。つまり人・地域・時代によって変化しブレる可能性がある。それに対して、たとえば子犬や子どもをカワイイと思う気持ちは、万国共通に違いない。時代や状況にかかわらず誰の気持ちもやさしくするもの、すなわち「カワイイ」を提供していこう、サンリオは創業時に明確に定めたのだった。

2021.06.11(金)
文=山内 宏泰