WORLD DREAM PROJECTの市川太一さん、平原依文さんが中心となって編纂した「WE HAVE A DREAM 201カ国202人の夢×SDGs」(いろは出版)。
この本から、世界の若者のSDGsについての考えをピックアップします。
この若者たちは、ワン・ヤング・ワールド・サミットのアンバサダー。
190以上の国からやってきた代表者で、社会的影響力を加速させるために活動する優秀な若い才能が集まります。
【パナマ PANAMA】ディウィグディ・ロドリゴ・バリエンテ・アブレゴ
「私のルーツを消さないために」
子どもの頃、祖母はさまざまなハーブや樹皮、花とともに、私を入浴させました。私に守護と霊的な強さを授けようとしたのです。私は祖母の伝統的な療法を信じており、古の歌は大人になっても私を祝福し、守ってくれています。しかし、祖母、そして祖母の家、コミュニティ、文化の伝統は、気候変動による海面上昇のために消滅の危機にさらされています。
私は、中央アメリカの先住民族グナのコミュニティの出身です。パナマ北岸沖の島、プラヨン・チコで育ちました。人口約3,500 人のこの島は、パナマで最も海面上昇の影響を受けている場所の一つです。私の生きている間に、グナが住む島々は海面上昇によって消滅し、世界で最初の気候変動難民を出す可能性が高いです。グナの子どもたち(burwigans)は、気づかないうちにすでに犠牲者たちなのです。
私たちの文化が直面する危機を知り、Burwigan Projectを立ち上げました。私たちのコミュニティを本島へと移すための資金を集めるため、アートを通じて喫緊の課題に対するパナマ政府や国際組織の意識を高めるとともに注目を集めるのです。私たちは、島々へのアートツアーを企画し、持続可能な開発の原則に基づいた観光業への道を開いてきました。
私たちのアートツアーは、世界のさまざまな地域や分野のアーティストと、グナの子どもたちや女性たちを結びつけています。ツアーではアーティスト、教師、子どもたち、そしてコミュニティが一緒にプロジェクトに取り組み、環境保護について学びます。プラスチック汚染や気候変動が島々に与える影響を作品として記録し、各アーティストの作品を街のいろいろな場所に展示します。プラスチック汚染と気候変動にまつわる活動を周知し、活動へ巻き込み、行動のきっかけとするのです。
写真や映像、物語、音楽、ファッション、インスタレーションなど、それぞれのアーティスト独自のアプローチで、複雑なデータがシンプルな視覚表現に置き換えられ、人々はすぐに共感して理解できます。同時に、グナのみんなにも認識を広めることもできるのです。アートに加えて武道のワークショップも開き、型にとらわれない指導方法を使って子どもたちに力を与えて、プラスチックと闘うclimate warriors(気候変動と闘う戦士)にしました。私たちの活動はメディアの注目を浴び、廃棄物処理のエンジニアや下水処理の専門家たちと協力する機会を持つことにつながりました。これは、他の分野、例えば水へのアクセスについての問題解決や、し尿を生物処理するシステム構築などで活動するための道が開かれました。
私は、観光業を通して人々をまとめることで、気候変動の影響を軽減することに貢献したいです。これはコミュニティを経済的、社会的に助けることになると同時に、気候変動によって避難した人々がきちんと移住できるように意識を高めるのに役立つことになるでしょう。移住を望まないグナの人々は島に住み続け、自分たちの文化を維持することもできます。観光業は、私の夢を実現する特別な方法だと信じています。
何世紀にもわたって、グナの人々は自分たちの文化の独立を守るため、政府の圧力に反抗しながら避難し、闘ってきました。何世紀にもわたって、世界中で私たちのような先住民のコミュニティが、世界の西洋化に伴う消滅の危機にさらされてきました。そして今、気候変動によって一挙に消滅してしまうかもしれません。私は、愛する海にそんなことをさせないために、海の健康を守りたいです。その力が社会的なネットワークにはあると、私は信じています。
2021.06.09(水)
文=「WE HAVE A DREAM 201カ国202人の夢×SDGs」編集部