古き神社仏閣や歴史的な建造物が建ち並び、今なお伝統と革新が交錯する魅力的な街・京都市。そんな京都市から少し足を延ばして“北京都”へ行ってみませんか? そこにはいつもとはまたひと味違う、新しい京都が待っていますよ。
第三弾となる今回は日本でもここにしかないと言われる珍しい狛猫のある、丹後・峰山の金刀比羅神社へ。狛犬ならぬ狛猫さんとはいかなるものか? 猫好きなら一度は訪れたい驚きの神社へ行ってみましょう!
丹後・峰山の人々が代々信仰してきたこんぴらさん
京都府北部、天女の羽衣伝説で知られる峰山町。この地は峰山藩京極家が領地として治め、歴代藩主が讃岐国(現在の香川県琴平町)の金毘羅権現を信仰していました。
この金刀比羅神社の創建は文化8年(1811年)。7代藩主の高備(たかまさ)が、丸亀藩・多度津藩の京極家に金毘羅社の斡旋を依頼したことで、峰山に御分霊を勧請し、現在の地に社殿を建立できたと伝えられています。
峰山と言えば、名産である丹後ちりめんの中心地。町内の商工業者や、丹後・若狭の海事従業者からの崇敬も篤く、丹後一円の人たちの心のよりどころとして信仰を集めています。
山裾に広がる約6,000坪の境内は厳かでもあるものの、なんだか柔らかい空気が流れています。参道の大鳥居をくぐると亀が甲羅干しをしています。なんとも癒されます。
日本で唯一の狛猫さんにご対面
境内を散策してみると、あちらこちらに猫アイテムが。それもそのはず、この金刀比羅神社には日本で唯一といわれる狛犬ならぬ狛猫が鎮座しているのです。にゃんとも驚きです。
唯一無二、日本、いや世界でひとつの狛猫の由来は峰山の歴史に深く関係しているそうです。
ここ丹後・峰山は丹後ちりめん発祥の地。ちりめんづくりが栄え、峰山にはちりめん問屋や糸屋が軒を連ね、周辺の地域でも機織りが盛んになるとともに、その絹を生み出すための養蚕も行われるようになりました。
この養蚕の大敵が「ネズミ」。ネズミは蚕や繭を食い荒らしてしまうのです。そのため、ネズミを退治してくれる猫はちりめんを、ひいては人々の暮らしを守る大切な存在となったのです。
狛猫がおわすのは金刀比羅神社境内社の「木島神社」。この神社は山城国(現在の京都市)の養蚕の神、木嶋神社からの勧請で出来たもので、神社の創建後しばらくして狛猫が奉納されたそうです。人々の生活を実際に守ってきた猫がその土地の神様にお仕えして、心の支えにもなっていたというのは素敵な話ですよね。
2021.06.07(月)
文=CREA編集部
写真=鈴木七恵