夫婦別姓の話し合いは去年から

――家事・育児の平等負担が、夫婦間のジェンダー平等につながっていったんですね。夫婦別姓の提案は牧野さんからですか。

牧野 そうです。夫とジェンダー平等の意識を共有できたと感じた去年の秋から話し合いをはじめました。もともと名古屋の実家が牧野家の本家だったので、祖母はずっと「牧野姓を残してほしい」と言っていたんです。

 実は25歳で結婚となった時、夫の両親に「結婚を考えていますが、名字は変えたくありません」と、事実婚を希望している旨を話していました。でも義父母は「何を言ってるの?」という感じで、味方だったはずの夫も黙ってしまい、結局、事実婚は叶いませんでした。

 でも当時の夫や義理の両親を責める気はありません。多くの人にとって「女性は結婚したら夫の家に嫁ぐ」のが当たり前だったわけで、今まで考えたことがないだけなんだと思います。それに当時は私自身も知識不足で、度胸も行動力もありませんでした。

 

子どもたちの意思をどう尊重するか

――今はどういう状況なのでしょうか。

牧野 子どもたちも含めた家族会議を経て、年内に夫婦別姓が成立できるよう、今は弁護士と話し合っているところです。

――夫婦別姓を叶えるために書面上は離婚をし、事実婚というかたちで家族のかたちを継続する、ということですね。

牧野 そうです。ただ今の日本では「共同親権」が認められておらず、父か母のどちらかだけが親権を持つ「単独親権」なので、どうしても父・母どちらかに親権を決めなくてはいけません。そこをどうにか共同親権に近いかたちにできるような書面づくりを弁護士と一緒にやっています。

――たとえば母親が親権を持つことになると、子どもの名字も母の名字になるということですか。

牧野 これがまたややこしいのですが、戸籍と親権は別物のため、戸籍は夫と一緒で父親の名字を名乗っているけど、親権は母親にある、というパターンもあります。ただうちの場合はそこまでぐちゃぐちゃにしたくないので、親権を持つ方の籍に子どもも入る、というかたちにする予定です。

2021.05.26(水)
文=小泉なつみ