夫婦別姓を選択できる法制度がないのは憲法違反だとして、ソフトウエア開発会社「サイボウズ」社長の青野慶久さんら4人が国を相手に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は2月26日、請求を棄却した1審・東京地裁判決(2019年3月)を支持し、現行制度は合憲とした。

 青野さんらは上告する方針を示しているが、原告側にとって、「憲法の番人」である最高裁の最終判断が最も期待できるのではないかとの観測がある。それはなぜなのか――。


 青野さんは01年に結婚した際に「妻の姓」を選択する一方、仕事では旧姓の「青野」を通称として使用してきた。しかし、株の名義は結婚後の姓に変更する必要があったといい、法律で夫婦別姓が許されているのなら本来は不要な手数料がかかるという。

 また、ビジネス上の不便も多くあるとして、18年1月、そうした不都合から生じた精神的苦痛に対する慰謝料などの支払いを国に求めて提訴した。

 原告側は今回の訴訟で、日本人と外国人が結婚した場合は戸籍法の規定で夫婦別姓が選択できるのに、日本人同士の結婚でこうした規定がないのは「法の下の平等」を規定した憲法に違反すると主張した。

高裁は「国会で論ぜられるべきだ」と言及

 これに対し、高裁は「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」という民法750条は、日本人と外国人が結婚した場合に適用されないと指摘。このため、日本人同士の結婚と比較できないとし、「差別だとする原告側の主張は採用できない」と退けた。

 また、「夫婦の姓をどう定めるかは、社会の受け止め方に関する判断を含め、国会で論ぜられるべきだ」とも言及し、選択的夫婦別姓の是非は立法府で議論するべきとの認識を示した。

 高裁判決後の記者会見で、青野さんは最高裁に上告する意向を明らかにした上で、「昨年3月の東京地裁の(敗訴)判決以後、全国の地方議会に選択的夫婦別姓制度の法制化を求めて陳情する活動が広がっている。政治家の方たちも前向きに動いている。裁判は棄却されたが、最終ゴールは苦しんでいる方々が救われるような立法だ」と裁判外での動きにも触れ、先を見据えた。

2020.03.19(木)
文=平野 太鳳