料理を「作らない・作れない」ことに罪悪感を持っている人に贈る、ベテランフードライター・白央篤司さんの金言&レシピ。
冷凍食品にちょい足しするのも立派な自炊。簡単なことから始めてみませんか?
料理しない私ってダメ……
罪悪感を抱えるの禁止!
「料理は、あまりしない。いや、ほぼしていない」
そんな方々から「自分に罪悪感を覚える」という声を少なからず聞いてきました。仕事帰り、できあいのものを買ってしまう自分が情けない。“みんな”はできているのに。もっとちゃんと日常的に料理するのが“普通”なのだろうに……といった申し訳なさ、後ろめたい気持ち、自責の念。
向上心からの思いなのかもしれませんが、私はすごく疑問なのです。その「罪悪感」って感じる必要、あるのでしょうか?
“みんな”とは誰なのか。
“本当”って、何のルールに照らし合わせているのか。
あなたは誰かと比較されなければならないのでしょうか。
あなたの人生で、あなたの生活です。「本当はこうやるのだ」「こうやれないのは、おかしい」なんて誰からも言われる筋合いはありません。実際、誰からも何も言われていないのに罪悪感を抱え込んでしまっている人は結構いるもの。
この手の悩みを持つ人と話していると、心に“エア義母”を飼ってしまっていると感じるんですね。注意好きの「実在しない」お姑さん。「またレトルトなんか買って……」「お野菜もっとちゃんと摂ったほうがいいのに」「経済的にも、もっと自炊したほうがいいんじゃない?」
コンビニで弁当やら総菜を買うとき、外食で済ますとき、心の中のエア義母が勝手に話しかけてくる。この傾向は、どちらかというと生真面目で、母親が料理好きだった人によく見られると感じています。昔ながらの「女は料理ぐらいできて当たり前」という価値観にどこかで囚われてしまっている。
なにより大切にするべきは、自分です。本業で疲れているのならば、それ以外の部分では自分を休め、活力を取り戻すことを優先しなければ。もちろん食は生活の基本でもあるけれど、そこにこだわりすぎるあまり本業に支障が出ては元も子もないのですから。
そりゃあ、手づくりの味はいいものです。出来たてのおいしさは何ものにも代えがたい。でも、料理するのが難しければ無理をしてもしょうがない。「しない」という判断だっていいじゃないですか。
料理するにしても、現代は食事の用意をラクにしてくれるものがたくさんあります。カット野菜でも冷凍食品でもレトルトでも半調理食材でも、どんどん活用しましょうよ。自分にラクを与えれば与えるほど、いつか余裕は生まれてきます。料理してみるのであれば、そのときでじゅうぶん。
ともかくも、意味なく「罪悪感」を抱えないでほしい。くれぐれも、心にエア義母を育ててしまわないように!
2019.04.12(金)
文=白央篤司