2人目のキーマンも「自然なこととして旧姓を使わせていただく」

 続いて、19年10月に最高裁判事に就任した岡村和美氏も記者会見で「私の中では自然なこととして旧姓を使わせていただく」と発言した。宮崎氏に続いて旧姓使用を明言し、女性の最高裁判事が旧姓を使用する流れができつつある。

 岡村氏もハーバード・ロー・スクールを修了し、米ニューヨーク州弁護士登録、外資系金融機関勤務を経て、日本で検察官になり、最高検検事や法務省人権擁護局長などの要職を歴任後、消費者庁長官も務めた異色のキャリアの持ち主だ。単一職一筋のルートではないだけに、幅広で柔軟な思考が期待されている。

 宮崎氏、岡村氏が相次いで旧姓使用を宣言したことで、他の男性判事もその存在感を無視することはできないだろう。

 そもそも、最高裁の15年判断の際、全裁判官15人のうち、女性裁判官3人(当時)を含む5人が「違憲」との反対意見を述べた。その後、旧姓使用を実践する新たな2人の女性裁判官が登場したことで、最高裁内に新しい風が吹いている。

 15年の「合憲10・違憲5」は、違憲がプラス3で合憲がマイナス3となり逆転する。19年の参院選の党首討論では、安倍首相以外の全党首が選択的夫婦別姓を容認する姿勢を示し、社会の受け止めも寛容になっている。世界の趨勢も既に別姓認容の流れだ。

 今後、選択的夫婦別姓を巡って、最高裁がいかなる判断を示すのか、目が離せない。

※こちらの記事は、2020年3月3日に公開されたものです。

記事提供:文春オンライン

2020.03.19(木)
文=平野 太鳳