そもそも11年前に長女が生まれた時、子どもが「夫の家の孫」扱いされることに違和感を感じていたんです。結婚して夫の姓になると、私と夫の子どもでも「夫の家の子」になってしまうのかと、割り切れない思いでした。

 母からも「あなたは嫁に行った人間なんだから」と言われたように、自分が生まれ育った姓を捨てて相手の名字を名乗るということは、相手に所有されることなのかもしれない、と感じました。夫自身もそういう風に考えているフシがあったので、「私はあなたの便利屋じゃない」と言ったこともあったんです。

 

1週間全部、家事・育児をやってもらって変化が起きた

――そこからどうやって夫婦間の不平等を改善していったのでしょうか。

牧野 「俺だって家のことはやってる」「私だって」という平行線の言い合いが続いていた2年前、夫がポロッとこぼしたんです。「言われたことはやれるけど、言われてもいない“やってほしいこと”を想像するのは無理だよ」と。そこで1週間全部、家事・育児を夫にやってもらうことにしました。そこからは話が早かったですね。

――1週間を経て夫婦はどう変わりましたか。

牧野 夫から「はじめて全体を俯瞰して見られて流れを掴むことができたから、あと1週間延長させてほしい」と言ってきたんです。合計2週間すべてをやってもらった後は、夫の家事・育児に対するコミットメントが格段にアップしました。

 私自身、彼に家事・育児の全貌を見せていなかったことにも気がつきました。ある一部分だけを“お手伝い”させていた自分のやり方にも問題があったんです。「家事・育児=女の仕事」という無意識のバイアスによって、なんでも一人で背負い込んでいました。

 それからは私も割り切って、まるごと夫にお願いをしています。たとえば息子のサッカーチームのことであれば、LINEグループに夫を招待して私は抜けるというような感じで、今では夫婦間で家事・育児の共有と分担を進めていくことができています。

2021.05.26(水)
文=小泉なつみ