——歌い手のどういうところに憧れたんでしょうか?

Ado やっぱり、顔も名前もわからないのに、歌だけで人を魅了してるのがすごいと思っていました。歌い手って、今の私のアイコンみたいに、キャラクターのイラストが自分として認識されるんです。アニメもボカロも好きだったので、そういうスタイルにもすごく憧れていました。

——Adoさんの魅力は、歌声の表現力にあると思います。迫力のある声から繊細な声まで、様々な歌声の表現が持ち味になっている。そういうことにご自身で気付いたタイミングはいつ頃のことですか?

和田たけあきさんの「キライ・キライ・ジガヒダイ!」

Ado 和田たけあきさんの「キライ・キライ・ジガヒダイ!」という曲を歌ったときですね。この頃から、がなったり、激しく地声で張り上げる感じを始めたんですけれど、これが自分に合ってるんじゃないかと思って。最初にこの曲を投稿した時に、何かが掴めたんじゃないかという感じがありました。

——和田たけあきさんは、言葉を選ばずに言うと、悪意のようなネガティブな感情をストレートに表現するタイプのボカロPですよね。彼の曲によってAdoさんの何らかの扉が開いたような感覚はありましたか?

Ado ありました。特に「キライ・キライ・ジガヒダイ!」は、自分の心情をまるまるそのまま歌詞にしたような曲だと思ったんです。「アァ!愛されたい!愛されたい!」のところとか、私自身もずっと一人で活動していて、再生回数が伸びないことに悩んでいたり、孤独だと感じる時があって。根暗で人にズカズカ行くタイプではないし、それこそ自我が肥大したようなわがままな気持ちもあるし、そういうところに深く共感しました。

 

——「キライ・キライ・ジガヒダイ!」を投稿した後くらいから、いろんなボカロPとのコラボも増え、Adoという名前がクリエイターの間に広がっていくようになっていったと思います。こういう流れについてはどう感じてましたか?

2021.05.21(金)
文=Ado