楽曲制作からSNSとの付き合い方、スキンケアの話まで幅広いトークを展開
配信シングル「声」をリリースし、新曲「カタワレ」がドラマ主題歌に決定した佐藤千亜妃さん。
「声」は雪景色を想起させるしっとりとした切ないバラード、「カタワレ」は鈴木亮平さんと吉岡里帆さんが出演するテレビドラマ「レンアイ漫画家」への書き下ろし曲で華やかにはじけたポップソング。
次々と届けられるソロ名義での楽曲は、音楽性も歌う情景も何の枠もなく、とても自由だ。
音楽を中心とした活動全般のこと、そして現在のライフスタイルについて、お話を伺った。
「自分にしかできないことって何なんだろうってすごく考えた」
――配信中の「声」とドラマ主題歌に決まった「カタワレ」は、かなり振れ幅のある2曲ですね。
そうなんですよね。「声」は2年前にしっとりとしたバラードにハマってて、そういうバラードって書いたことないなと思って書いた曲で。
「カタワレ」はラブコメのドラマ主題歌ということで、もしかしたらこれまでで一番口ずさみやすい曲になったのかなって思ってます。
好奇心旺盛ってこともあって、貪欲にいろいろな音楽を吸収した結果、一昨年にリリースしたファーストアルバムの『PLANET』みたいな作品ができて。バンドという枠組みがなくなって、ソロで自由奔放にいろんな曲を作ってみたからこそ、今は逆に自分の枠組みみたいなものを設定して曲作りをしてみたいと思っています。
なので、今回リリースされた2曲には振れ幅を感じるとは思うんですが、意外とドラムの音や立ってるギターの音は遠くないサウンドで構成されていて。今作ってるセカンドアルバムの曲は、そういう風に「生音で録る」とか「音の数を増やしすぎない」っていうのが共通してるんですよね。前作は打ち込みとかを入れて幅広い感じの楽曲が詰まった作品でしたけど。
アレンジャーさんも前回はいろんな方に参加してもらったんですが、一本筋の通った統一感のあるアルバムにするために、河野(圭)さんに共同プロデュースという形で関わってもらっています。
――ファーストアルバムの『PLANET』を作ってみて思ったことというと?
バンドをやってた時はバンドで表現できることを追求してたんですけど、ソロになってからは、学生時代にソウルやR&Bを聴いていたこともあって、「ジャンルに縛られない音楽をやってみたい」「私は何でもできるんだ」っていうちょっと強気な気持ちで作ってたんですね(笑)。
でもコロナ禍で自分のことを顧みた時に、逆に自分にしかできないことって何なんだろうってすごく考えたんです。そもそも何のために音楽を始めたのかとか、振り返ることが多くて。
それで次は、自分の美学に沿ったらこうするよねとか、自分が言いたいこの言葉はこのサウンドじゃないと表現できないよねっていうようなことを見つめるアルバムにしたいなって。そうやって自分のコアを大切にしてアルバムを作っているところです。
だから、2021年の一発目の作品としてリリースした「声」は、アルバムの指針という意味もあります。私のバンド時代から今に至る唯一変わらない部分は声と歌詞の世界観だと思っているので。
――いろいろなことができるということがわかった上で焦点を絞るというのは、昔とはまた違いますよね。
そうだと思います。『PLANET』を作ったことで、いろんな手法の中から取捨選択できるようになりました。表現の幅も広がるし、説得力が出るかなって。
やって無駄なことはないなって思いますよね。色々な事を吸収したけど、結局戻ってくるところは自分の血の中にあるもの、原体験としてある感情だったり……もちろん大人になってから得た感情もありますけど、知識的なことよりも、感情が出発点になってる音楽が自分にとって一番しっくりくるなと思いましたね。
2021.03.25(木)
文=小松香里
撮影=佐藤 亘
スタイリスト=入江陽子(TRON)
ヘアメイク=SAKURA(まきうらオフィス)