「現金決済のみで困ったことは一度もないよ。外国人のお客さんだってお札や小銭でちゃんと払ってくれるよ」(店員)

「今後もキャッシュレス決済には対応しない」

「わしの屋酒店」経営者・山田博史社長は、次のように語る。

「キャッシュレスを導入しない理由は手数料の問題が大きいですよ。QRコードの決済だって、いずれ手数料は上がりますよね。それだったら最初からやらないほうがいいと思って。現金のみの案内も、先にお客様に伝えたほうが親切だと思って掲げているだけなんです」

 今後、キャッシュレス決済のお客さんが増えたら対応するのか尋ねたところ、山田社長は「対応しないですね」と即答した。

「キャッシュレス決済は便利でお得ですが、本来の旅行の魅力とはちょっと違うと思うんです。観光地の魅力は決済方法ではないですから、それ以外のところに力を入れていきたいという思いの方が強いです」

 山田社長はコンビニ事業の他に、「四万温泉エール」というクラフトビールの製造を行っている。四万温泉はこれといった特産品がなく、少しでも魅力ある地場の商品を作ることはできないかと考えて、地元の活性化に力を注いでいる。

「日本は現金を持ち歩いても安全な国なんですよ。それが日本の良さだと考えれば、現金のみのお店も、まだまだあってもいいんじゃないかと思いますよ」

求められる「“裏側”を知った上での選択」

 キャッシュレスの利用者は今後も増え続ける。現金でモノを買うことが珍しくなり、お金を財布から取り出す行為も減っていくはずだ。

 しかし、この便利な決済機能を使うために、お店側は手数料を支払い続けなくてはいけない。取材したスーパーでは、システム手数料と販促費をうまく相殺することができたが、それができないお店は、決済手数料を支払うために、どこかで利益を削らなくてはいけない。

 もしかしたら、決済手数料を支払うために、商品の質が落ちたり、サービスが低下したりする可能性もある。たかが数%の手数料だが、場合によっては、巡り巡って我々消費者がその手数料分の負担をかぶることになるかもしれない。

2021.05.20(木)
文=竹内謙礼