北海道で生まれ育った俳優・金子大地。学生時代に「アミューズオーディションフェス2014」にエントリーし、「俳優・モデル部門」を受賞。「俳優になる」という目標を掲げ、18歳で単身上京した。
「おっさんずラブ」のマロ役や、主人公のゲイの高校生を演じた「腐女子、うっかりゲイに告る。」などテレビドラマで注目を集め、近年は舞台や映画に精力的に出演中。
2022年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に源頼家役での出演も決定している24歳に、初主演映画『猿楽町で会いましょう』(児山 隆監督)を入り口にインタビューを試みた。
「自分のかっこ悪い部分、ダサい部分をさらけ出しました」
――金子さんは『猿楽町〜』で、フォトグラファーを目指して東京に出てきた小山田修司を演じています。どのように役にアプローチしましたか? 役を作るというよりは、むき出しのように見えました。
そうですね。自分のかっこ悪い部分、ダサい部分をさらけ出した感じです。児山監督から「とにかくかっこ悪くいてくれ」と言われたので、余裕のなさやダサい部分を出すことを心がけました。
役に対しては常に自分との共通点を探しますし、基本的にどんな役も全部が自分だと思っているので、「難しい」「わからない」「恥ずかしい」といった壁にぶつかることはなかったです。
ただ、完成した映画を観た時は、かっこ悪い自分が映っていて少し恥ずかしかったですが(笑)、「いい映画だな」と思いました。
――恋愛関係になるユカ(石川瑠華)との生々しいやりとりは、どのように作ったのでしょう?
「未完成予告編映画大賞MI-CAN」(※)の受賞作での、石川さんの表情がすごく素敵だったんです。台本通りに演じてもあれを超えるものは引き出せないなと思ったので、監督に「ぶつけてみても良いですか?」と相談して、アドリブを入れたりしました。
石川さんには何も言わずに、本番でいきなり怒鳴って驚かせたりすると、石川さんのリアルな反応がありました。それを受けて僕の反応や表情も変わったので、相乗効果があったんじゃないかなと思います。
※次代を担うクリエイターの発掘・育成を目指して、まだこの世に存在しない映画の予告編を制作し、グランプリには本編の制作費3,000万円を授与する第2回「未完成映画予告編大賞 MI-CAN」で、児山隆監督の『猿楽町で会いましょう』がグランプリを獲得した。
――ユカの裏切りを疑って、ユカに詰め寄る時の鬼気迫る表情からは、嫉妬と怒り、そして小山田の器の小ささみたいなものが伝わりました。
あのシーンを撮影した日は、寝不足だったんです。
――え? だから目が血走っていたんですか?
そうなんです。体調が万全ではなかったのですが、必死でお芝居をした結果、いい感じに映っていたので、良かったと思いました。
――(笑)。「腐女子〜」に関するインタビューでは、「見ている人に伝わるお芝居を心がけていた」という発言がありました。『猿楽町〜』はそれとはまた違う方向性のお芝居だったのでは?
「腐女子〜」はLGBTが題材なので、同性愛者の高校生の気持ちを少しでもわかってもらえたらいいな、と思って芝居をしていました。
でも、「猿楽町〜」は、小山田のことをわかってもらえなくてもいいですし、「こんな映画、二度と見たくない!」と思ってもらっても嬉しいです。みんながみんな面白いと思わなくてもいいと思っていて、何かを感じていただきたい作品です。それでこそ映画だと思います。
2021.05.19(水)
文=須永貴子
撮影=榎本麻美
スタイリスト=千葉潤也
ヘアメイク=Taro Yoshida(W)