一年以上つづくコロナ禍の中で、各地の名宿が廃業寸前に追い込まれています。そこで温泉ジャーナリストの山崎まゆみさんがいま提案するのは、近場の宿でのワーケーション。「いつか再び、誰もが訪れられるように、近くの宿を助けていただけたら」(山崎さん)。全国の温泉宿、温泉地のきわだったコロナ対策とともに、ワーケーションにおすすめの宿をご紹介します。
※記事内の情報は2020年12月時点のものです。
コロナ対策で温泉地や旅館を選ぶなら
温泉旅行を計画する際、いま最も気になるのはコロナ感染防止対策だろう。
全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会等の業界団体は「コロナ感染防止対策のガイドライン」を示しているが、これに準じつつ、各宿は独自の個性を発揮しはじめている。
私自身がコロナ禍に訪れた中で印象に残っているのは、神奈川県箱根に9つの温泉旅館を持つ一の湯グループ。徹底したコロナ対策をまとめた「一の湯クリンリネスポリシー」という1分間の動画を見て安心感を抱き、6月末にススキの原一の湯を訪ねた。
ナイロンカーテンが設置されたチェックインカウンター越しに、フェイスガードとマスクをしたスタッフが出迎えてくれ、滞在中の注意事項が書かれた紙を渡される。夕食時の席の配置も、スタッフの対応も十分な配慮がなされていた。
業界大手の星野リゾートがコロナ対策を打ち出したのは、宿泊業の中ではおそらく最も早い3月半ば。その後も矢継ぎ早に対策を追加し、5月半ばには「最高水準のコロナ対策宣言」を発表した。最大の注目点は「大浴場の混雑状況がわかるアプリ」を独自に開発したことだろう。
自分たちで学びながらガイドラインを作成
温泉地全体でコロナ対策に取り組んでいるのは、兵庫県城崎温泉。4月の緊急事態宣言で日本の旅館の約9割が休館している最中から検討を重ねたのだという。
「旅館や飲食、物販の組合長が集まり、感染症専門医を囲んで話し合いを重ねました。自分たちで学びながら作ったガイドラインですので、完成した時点でその意味を深く理解していました。他人が作ったガイドラインを守るのとは違います」
2021.05.07(金)
文=山崎まゆみ