こう胸を張るのは、城崎温泉観光協会会長・高宮浩之さん。温泉街を歩くと、緑で縁取りされた「城崎温泉の新型コロナ対策」というポスターが目に付くが、その内容には細かな気遣いがきいている。
たとえば、温泉は気持ちがほどける場である。温泉に浸かり、寛ぎ、食事をしてアルコールも入る。最もリラックスするからこそ、温泉旅館は本来、最もマスクをしたくない空間だ。特に湯上りのマスク着用は息苦しい。そこで城崎温泉では浴衣に似合う和風柄のマスクを制作。浴衣で温泉街をそぞろ歩きするのが名物の、城崎温泉らしい工夫だ。私も朱色の地に黄色や緑色の細かい幾何学模様が入ったお洒落なマスクを着用してみたら、自撮りがしたくなった。冷感仕様だから湯上りもさほど苦しくない。
コロナ前は「お客を至れり尽くせりでもてなしたい」という女将やスタッフの心配りこそが、温泉旅館の魅力だった。しかしコロナ禍では、スタッフとお客の距離の取り方が難しい。ましてコロナ感染拡大中の時には『三歩離れて 一歩前へ』という新潟県の旅館やホテルのおもてなしは行き届いている。
「コロナ禍でお客様をもてなす距離感を言葉で示しました。また新潟県で制作したピクトグラム(アイコン)を一覧表にして、お客様に一目でコロナ対策を理解して頂けるように『対策の見える化』に力を入れています」(新潟県旅館ホテル組合専務理事・金子春子さん)
武漢からの帰国者を受け入れたホテル三日月の対策
最後に忘れてはならないのが、千葉県勝浦温泉ホテル三日月。覚えているだろうか。1月末、191人もの武漢からの日本人帰国者を経過観察のために受け入れたのが、ホテル三日月だったことを。
当時、コロナウイルスはまったくの未知のものだったが、近隣の亀田総合病院感染症科の監修のもと入念な対策を行い、帰国者からもスタッフからも感染者を出さなかった。現在はさらにブラッシュアップした「新型コロナ疫病対策7ポイント」を実施しているので紹介しよう。
●全スタッフ亀田総合病院コロナ対策講習受講済
●全店玄関AIサーモグラフィーで体温確認
●全客室にスプレー式アルコール消毒液完備
●全フロントにアクリルボード等の感染防止体制
●フェイスシールドから笑顔
●全スタッフスプレー式アルコール消毒液必携
●食事会場の全テーブルにスプレー式アルコール消毒液完備
2021.05.07(金)
文=山崎まゆみ