宇野エリアは、岡山県の南端に位置する風光明媚で温暖な気候の港町。瀬戸内海の島々への定期航路やクルーズ客船の寄港地でもあります。瀬戸内国際芸術祭のアート作品をはじめ、さまざまなパブリックアートが楽しめる宇野港周辺では、瀬戸内国際芸術祭2010で生まれたオブジェ「宇野のチヌ」や、同祭2016の作品の、プロジェクトの一環として作られたJR宇野駅のモダンな駅舎なども見られます。

 そして今、宇野港のランドマークとして最も異彩を放つのが「東山ビル」。たくさんの魅力が詰まったレトロビルについてご紹介します!

パブリックアートが楽しめる宇野の街

 JR宇野駅から歩いて約10分、独特な空気感を放つ建物が現れます。その名も「東山ビル」。瀬戸大橋もまだ開通していなかった1966年、宇野港が瀬戸内海の島々への玄関口として賑わっていた頃に建てられ、70年代は喫茶店などの飲食店、港の事業所で働く女性達の宿舎として使われていたそうです。やがて港の衰退や建物の老朽化とともに80年代は廃墟と化し、地元では幽霊ビルと囁かれ、近寄る人もいなかったといいます。

 そして数年前から、「うのずくり活動」の移住者第1号である西野与吟さんをリーダーとする有志によって再生計画が進められ、昔の面影を残しつつもクールなビルへとリノベーションされました。今は2~4階に「HYM.Hostel」という宿泊施設、1階にハンバーガーショップ「#8WIRE(ナンバーエイトワイヤー)」、「BOLLARD COFFEE」のほか、ギャラリーやバーバーなどが入る複合施設となっています。

 2~4階にある部屋は白を基調としたシンプル&ミニマルな造りで、全室オーシャンビュー。建物自体は古いものの、センスよくリノベーションされていて、ほっと落ち着ける空間になっています。トイレとシャワーは共同。トイレは各フロアに、シャワー室とランドリーは2階に設置されています。チェックインは予約時に知らされる暗証番号でキーを受け取る、セルフチェックインを採用。煩わしいことを最小限に留めたい、気ままな旅を望む人にとって嬉しいシステムです。

 2階と3階にある海側の共有スペースは、ホステルに宿泊する人のラウンジとして、また、1階でテイクアウトしたコーヒーやハンバーガーなどを楽しめるスペースとしても利用できる空間。行き交う船を見ながら、まったりと過ごせます。テーブルやチェアも置かれているので、リモートワークもOK。夏場の夜限定で、屋上ビアガーデン&ライブが催されたり、カルチャーのイベントなども随時開催されるので、HP等SNSをチェックしてくださいね。

 東山ビル再生のリーダーである西野与吟さんは、オーダージュエリーを手掛けるアーティストでもあります。エンゲージリングのほか、ゴールドやプラチナほか各種金属を使ったアクセサリーなども制作。ビルの4階に、シックなグリーンのタイルが張られた工房兼ギャラリー「anikulapo」があり、ゆっくり鑑賞して購入もオーダーも可能(予約制)。

2021.05.07(金)
文=CREA編集部
写真=嶋崎征弘