連載中、最も鮮明に覚えているのが2018年6月の自民党の二階俊博幹事長の、
「この頃、子どもを産まない方が幸せじゃないかと勝手なことを考える人がいる」
「皆が幸せになるためには子どもをたくさん産んで、国も栄えていく」
という発言だ。この発言を知ったときは、戦時中の発言かと耳を疑った。子どもを産まない(産めない)人にはさまざまな事情がある。そもそも結婚も出産も個人の自由であるし、収入や年齢などの理由で出産したくてもできない人もいる。そうした人たちの声に耳を傾けるのが政治家の役割ではないか。
これが与党三役の発言かと思うと、頭がくらくらした。
令和に入ってからも同じような発言が続いた。2019年5月には、「失言のデパート」と呼ばれた自民党の桜田義孝五輪相(当時)が、千葉市で開かれたパーティーで少子化問題に言及し、
「お子さんやお孫さんにぜひ、子どもを最低3人くらい産むようにお願いしてもらいたい」
と来場者に呼びかけて批判を浴びた。その会合では「最近は結婚しなくていいという女性がみるみる増えちゃった」とも語った。いかに「結婚しない=絶対悪」という考え方が通底しているのかよく分かる。政治家というよりも、まるでひさしぶりに法事や結婚式で会う、心ない親戚のおじさんのようだ。
過去には2003年に当時の森喜朗首相が、「子どもを一人も作らない女性が好き勝手、自由を謳歌して、年を取って、税金で面倒をみなさいというのは、本当はおかしい」と発言。2007年には、柳沢伯夫厚生労働相(当時)が「女性は産む機械」と発言し、大問題に発展した。
「結婚しない=絶対悪」を捨てない限り、少子化に歯止めはかからない
男性だけではない。2017年には山東昭子参院議員が「4人以上産んだ女性を厚生労働省で表彰することを検討してはどうか」と述べた。そもそも、子どもを国家のために産むという発想そのものが時代錯誤も甚しいものだ。
これらの問題発言を口にした政治家の多くが、60~70代、つまり代理婚活に熱心な30~40代の親世代。「女性は結婚して子どもを産むのが当たり前」という価値観の中にどっぷり生きてきた人が多い。時代の流れを理解しようとせず、結婚しない人生を簡単に否定する。
当人としては失言というより、本音に近いのかもしれない。古い価値観を持つ人たちは少子化の責任を女性だけに押しつけようとする。そして、たくさんの女性たちがプレッシャーに押しつぶされそうになっている。それこそ本物の地獄絵図ではないだろうか。
政治の世界の認識が変わらない限り、少子化に歯止めはかからないだろう。取材をしていると、政党や性別を問わず、若手議員を中心に、少子化問題に関心が高かったり、性的少数者を含め多様性のある社会への理解が深かったりする人に出会うこともある。若い世代の有権者が投票に行き、どういう考えの議員なのかをしっかりと見極めることが、政治を変えていく一歩となるだろう。
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2021.04.18(日)
文=筋野 茜