「プロフェッショナル」は様々な分野の第一線で活躍する人物に密着し、その仕事ぶりや発言から文字通り「プロフェッショナルとは何か」を炙り出す人気番組だ。この大作アニメがどのようにつくられたのか、時代が変わる中で葛藤はあったのか、など、その答えが知れるかもしれないと、リアルタイムで視聴した。

 今回の「プロフェッショナル」はその歴史でも最長の1214日という長期密着期間で構成されており、TVのドキュメンタリーとしては唯一「シン」の制作現場を映し出し、監督の作品に賭ける姿勢や想いを肉声で引き出すことに成功した貴重な内容となっていた。

 

 番組は「この男に安易に手を出すべきではなかった」というモノローグから監督自身の「本当にやりたいことは何一つない」「アイハブノーアイデア」などパンチラインとも言える意味深発言をダイジェスト的につないだ構成で始まる。畳の上に倒れ込む姿のバックで交響曲第9番第4楽章「歓喜の歌」が高らかに流れるなど、孤高の天才ぶりが伝わるオープニングだ。

 だがいざ密着が始まると、作業場にはほとんど顔を出さず、打ち合わせでもやる気があるのかないのか、どこか上の空の監督。そこにジブリのプロデューサー鈴木敏夫による「大人になりそこねた人」などの人物評が語られる。「この人、この作品、本当に大丈夫なのか?」と感じたあたりで視聴者は監督の真意を知ることになる。

「設計図を頭の中でつくりたくない」

 新作を絵コンテ無しで進めるという。以降番組では脚本を書き上げたあとは現場に極力具体的な指示を出さず、仕上がってくるものに対してジャッジする様子が数多く映し出された。今回は監督の脳内に構築した作品を外に取り出すのではなく、他者とつくりあげることに重きを置いてるようにみえた。特に俳優を起用してモーションキャプチャ技術でテストをする現場でのアングルや構図への異常なこだわりは見どころだ。

2021.04.03(土)
文=RAM RIDER