ローカル食材を使ったレストランは、力の抜けたカジュアルさが魅力。
侍のような小林シェフが手がける「メゾンケイ」。中村さんは、今のガストロノミーのトレンドが盛り込まれたレストランだと話します。
「まずはナチュラルなテイスト。富士山が見える緑豊かな自然の中のロケーションは、都内ではまずあり得ません。内装も全体的にウッド調ですし、カトラリーもシンプルでクラシカルなものが使われています。パリのRestaurant KEIでも使っているスガハラガラスのタンブラーは、木洩れ陽を思わせるような美しい光を演出するデザインのものを選んでいて、全体的に少し力の抜けた感じも今っぽいです。
料理はローカルな食材をリスペクト。静岡産の野菜や駿河湾で獲れた魚などをふんだんに使っています。今、美食業界のキーワードのひとつにローカルガストロノミーがありますが、まさしくそれを体現しているレストランだと思います」
クラシックなフランス料理だからこその力強さ
中村さんは、今はイノベーティブな料理を出すレストランがたくさん出てきているが、「メゾンケイ」はそうではないと話します。
「主軸にあるのは、クラシックなフランス料理です。王道のもつ力強さを感じるメニューが味わえます」
料理のクリエイションに関しては、輪郭がはっきりしている印象を受けたそう。
「写真に例えるなら、手前から奥まですべてピントが合っているような感じで、どこをとっても味が明確。メリハリが効いていて、塩を効かせるところは、しっかりと塩の風味が感じられますし、何を食べているのか、何を食べさせたいのかがはっきりしています。金目鯛にしても、さっくりしている箇所はさっくりしているし、身の火入れも一番おいしく食べさせたい瞬間を的確にとらえていましたね」
2021.03.31(水)
文=石川博也