佐々木俊尚 1961年兵庫県生まれ。毎日新聞社、アスキーを経て、フリージャーナリストとして活躍。公式サイトでメールマガジン配信中。著書に『本当に使えるウェブサイトのすごい仕組み』

【KEY WORD:ロードサイド】

 開通したばかりのバイパス道路では、地価が比較的低いことから、広めの店舗開設がしやすく、フランチャイズを含む全国チェーンの店舗が軒を並べる現象がみられる。主に自家用車を交通手段とする商店形態で、地価が安いため広い店舗での薄利多売が可能で、低価格が実現できる。

アベノミクスよりもヤンキーが景気を刺激する!?

 東京に住んでる人たちは、東京こそが生活や文化のスタンダードだと思い込んでしまっています。

 昔はたしかにそうでした。東京で生まれた様々なライフスタイルや文化が、テレビや雑誌を通じて地方に届けられ、数カ月から半年遅れぐらいで地方でも流行った。つまり文化は東京で生まれ、地方へと流れていました。文化の中心は東京、もう少し正確にいえば文京区から新宿区、渋谷区、港区、目黒区、世田谷区あたりの「東京西半分」でした。

 ところが雑誌の部数が減少し、テレビも若い人はだんだん見なくなり、マスメディアを経由して東京と地方がつながるという構図がこの十年のあいだに徐々に崩れてきました。今、東京と地方ではまったく別の文化が育っていっています。

 地方では国道沿いに「しまむら」や「マクドナルド」、「イオン」のショッピングモールなどが建ち並び、これらが流通の中心になっています。こうした場所を「ロードサイド」と呼び、ロードサイド文化が地方文化の特色となっています。「しまむら」は地方では一般的なファッションですが、東京西半分では数えるほど。東京西半分で、「しまむら」は昔も今もほとんど着用されていないのです。

 ロードサイドは「ヤンキー」の世界です。1970年代の暴走族から80年代の竹の子族、ツッパリ、最近だとケータイ小説やギャル文化、キャバクラ嬢文化、浜崎あゆみ、EXILEなどがその系譜に連なっているといえるでしょう。

 東京西半分文化が数百万の人口しかいないのに対し、こうしたロードサイド文化の担い手は地方の圧倒的多数。しかしこれまで「東京発信」幻想にとらわれてきた企業やメディアは、こうした地方のニーズを捉えきれていません。日本社会がこまかい圏域に分断されていく中では、地方をターゲットにしたビジネスが大きく成長します。言い換えれば、このロードサイド市場に目を付ければまだ充分に日本のビジネスは成長の可能性があるということなのです。

2013.04.24(水)

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