一方で「ペットに依存しすぎると、ペットロスがひどくなる」とも言われるが、これについては濱野氏も阿部氏も「必ずしも、そうではない」と口を揃える。
飼い主としての責任感が強すぎる人は要注意
「依存というとイメージがよくないですが、それだけ強い絆で結ばれるペットと巡り会えたことは幸運なんです。亡くなった後の喪失感はもちろん大きいですが、それは幸せだった証でもあります。
むしろ私の印象では『飼い主としての責任感が強すぎる人』の方が、ペットロスは重くなりやすい気がします。飼い主として最後まで治療をやるべきという信念で、獣医師に言われた通り、100パーセントを自分に課す人ですね」(阿部氏)
なぜ、それがいけないのだろうか。
「責任感の強い人は治療に夢中になるあまり、ペットを本来の『〇〇ちゃん』ではなく『病気ちゃん』として見るようになってしまうからです。治療のためなら、嫌がる薬を飲ませ、点滴にも通う。その子に長生きしてほしい一心で頑張るわけですが、いざ亡くしてしまうと、苦しそうに治療を受ける最期の姿がフラッシュバックしてくる。『あんなに嫌がっていたなら、無理にやらなきゃよかった』という後悔や罪悪感に苛まれてしまうんです」(同前)
ペットの幸せそうな姿が飼い主に『回復のエネルギー』を与える
大事なことは、最期まで、病気ではなく、ペットと向き合うことだという。
「彼らが求めるのは、飼い主との変わらない平和な日常だけです。飼い主が病気しか見ずに暗い表情をしていると、ペットは『自分が何か悪いことをしているのではないか』と考えて、落ち込んでしまう。これは不幸です。終末期での重要な治療は『痛み』をとってあげるだけでいい。ペットは自分の病名を知りません。痛みさえなければ、自分のペースで好きなものを食べて動いて、好きな場所で寝ます。その幸せそうな姿が、ペットが亡くなった後も、飼い主に『回復のエネルギー』を与えるんです」(同前)
2021.03.24(水)
文=伊藤秀倫