「犬を亡くした直後に『見るだけで辛くなるから』と遺品を全部処分した方がいたんです。でも、しばらくしてから『あの子が生きていた証が何もなくなってしまった』と、もの凄く後悔されていました。だから私は、うちの子の遺品はいったんしまって、少し落ち着いてから整理しました。今も晴れた日は、お気に入りのクッションの上で、あの子が寝ているような感じがして、嬉しいんです」
ペットが遺してくれたものからもエネルギーをもらって、回復していくのだ。
〈オンリーワンなお守り〉
その恵子さんは、愛犬の小さな骨をケースに入れて肌身離さず持っている。
「何かあったら語りかけたりもしてますね(笑)。一緒にいる気がするんです」
前出の阿部氏も頷く。
「ペットの手形とか足形のスタンプをお守りとして持っている人もいます。骨もそうですが、オンリーワンなものを残しておくと、後々、本当に救われます。私がおすすめしているのは『家族写真』です。エンディングが近づくとみんな写真どころじゃなくなるのですが、病院では私が声をかけて撮らせてもらってます。最期の瞬間まで誇り高く生きるペットと一緒の写真は、家族の財産になります」
〈動画を撮っておく〉
写真といえば「亡くなった直後は(ペットの)写真を見ると泣いてしまった」という人が多かった。私も例外ではなかったが、なぜか動画は不思議と見ることができた。動画の中の愛犬の姿に思わず頬がゆるみ、悲しみがだいぶ癒された。
「そういうケースは初めて聞きましたが、興味深いですね。もしかすると写真だとペットのリアクションがないから、見る側の悲しい気持ちがそのまま投影されるのかもしれません。その点、動画はリアクションが映っているので、その場面での楽しい気持ちを追体験しやすい可能性はあります。それぞれの人に適した向き合い方があるのかと思います」(前出・濱野氏)
もっと動画を撮っておけばよかったと少し思う。
2021.03.24(水)
文=伊藤秀倫