#217 Jyodogahama
浄土ヶ浜(岩手県)
宮古湾の臼木半島の北東に位置する浄土ヶ浜は、「快水浴場百選」や「日本の渚百選」にも選ばれる、三陸きっての景勝地。
戦前から国立公園を目指し、1955年に「陸中海岸国立公園」に指定されました。
そして2013年5月24日、「三陸復興国立公園」に改名。それに合わせて、指定地域を青森県八戸市蕪島から宮城県石巻市牡鹿半島まで、南北約250キロに拡大されました。
“復興”と名称にあるのは、国内外から支援を受け、災害からの復興が目的のひとつであるため。そして防災教育の学習の場としての意味も含まれています。
そして将来、復興状況によって、ふさわしい名称へと変更を検討するそうです。
復興に向かって、前へ進む浄土ヶ浜。この浜が形成されたのは、約5,200万年前の古第三紀のことです。真っ白に輝く流紋岩という火山岩が波風で侵食され、壮大な自然のアートが生まれました。
ギザギザと彫刻刀で鋭く削ったような岩塊に、ところどころに県木のナンブアカマツが生え、景観に変化を与えています。
この二酸化ケイ素を含む岩肌の白色、木々の緑、海の青、色のコンビネーションも絶妙。まさに、この世のものとは思えない絶景です。
“浄土ヶ浜”と名付けたのは、宮古山・常安寺七世の霊鏡和尚といわれています。
天和年間(1681~1683年)、その頃は船で渡るか、道なき道を行くかしかない秘境だったこの浜を訪れ、「さながら極楽浄土のごとし」と、感銘を受けたのがゆえん。
その後も極楽浄土のようだと感じたのは、和尚だけではなかったようで、江戸時代の紀行文にも、そうたとえられています。
そして岩手の文人詩人である宮沢賢治が詠んだ短歌が歌碑となって浜辺に立っています。
「うるはしの海のビロード昆布らは寂光のはまに敷かれひかりぬ」
悟りの地のような静けさに満ちた浜に、肉厚で滋味深そうな昆布が干されている風景。穏やかな浜の情景が頭の中に浮かびます。
2021.03.13(土)
文・撮影=古関千恵子