花を早く咲かせる3つの秘策

 さて、花屋さんではウェディングの装飾やイベントのスタンド花など、その時に咲いていないと意味がないシーンが沢山あるために、時には花をあえて早く咲かせることもあります。

 みなさんも、「ホームパーティに向けて花を咲かせたい」「つぼみがなかなか開いてくれない」など、自分の思うようなタイミングで咲いてくれなかった経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか?

 花を早く咲かせる方法はいくつかありますが、1つ目はいらない葉を取ることです。葉から蒸散してしまう水分が葉を取ることでつぼみの方にまわり、つぼみが開きやすくなります。

 2つ目は温室状態にして光に当てることです。春に花が開くのは暖かくなり日が長くなるからです。つぼみにビニールなどをかぶせて保温して、カーテン越しの柔らかい光に当てることで、春につぼみが開くように、花が咲いてくれます。

 3つ目は延命剤を使うことです。市販の切り花延命剤には花瓶の水を清潔に保つための殺菌成分と花を咲かせるためのエネルギーである糖分が含まれています。この糖分がつぼみの開花を促進してくれます。

 これらの方法を併用すれば、花を咲かせるタイミングを調整することができます。すべてのつぼみがまんべんなく咲いている花は格別の華やかさがありますので、ぜひ挑戦してみてください。

 この時期だけにしか出会えないつぼみの花には、人の琴線に触れる共通するある特徴があります。それは散り際です。

 サクラは言うまでもありませんが、ポピーやチューリップはその花びらを1枚1枚ハラハラと落とし、花びらを数枚残した花の終わりは独特の美しさがあります。

 ラナンキュラスは無限とも思われる花びらを次々と落とし、だんだんと小さくなっていく姿が魅力的です。アネモネは時が過ぎると夜に花を閉じなくなり、花びらが少しずつしおれて、小さく細くなっていきます。最後には花びらが繊細な線のようになり散っていきます。

 東京の市場だけでも9,800万本の切り花が取引される3月。1年で一番取引量が多いにも関わらず、3月の花はその後、4月5月と長く花屋さんに並ぶことはなく、あっという間に店頭から姿を消してしまい、次に会えるのは1年後となります。

 そんなたくましくも、儚い姿に思いをはせながら、「つぼみの花」を探しに、3月の花屋さんに足を運んでみましょう。

佐藤俊輔(さとう しゅんすけ)

フラワーデザイナー。大手百貨店退社後、花の世界へ。2014年モナコ国際親善作品展国内選考会で特別賞を受賞。'17年「女性自身」(光文社)、’19年日本最大級の花材通販「はなどんやアソシエ」にて季節のアレンジメントを連載。テレビ、ラジオ出演のほか伊勢丹メンズ館のディスプレイ装飾など幅広く活躍中。

Column

新しい私を、花と。
Playful Flower Life!

花を買って家に飾る、それだけでも十分に豊かな時間を過ごせるけど、花の楽しみ方はノールール。今まで知らなかった新しい花との付き合い方を、フラワーデザイナーの佐藤俊輔さんがお届け。もっと自由に花と触れ合って、プレイフルな日々を楽しもう。

 

2021.03.05(金)
文=佐藤俊輔