今作はセリフがないときの芝居がすごく大事になる

――『23階の笑い』は1953年、人気コメディアンのマックス・プリンスのニューヨークにある事務所が舞台。マックスとそこに集まる、個性あふれる放送作家たちの物語です。

 僕の演じる役はルーカスといって、そのなかで一番若い新人の作家。向上心があり、はやくこの事務所になじみたいと思っている男です。

 三谷さんご自身も昔、放送作家をなさっていて、ルーカスと同じように先輩の放送作家たちと事務所に通い、台本を書いていたそうです。

 いまのテレビ業界のあり方など、三谷さんなりに考えていらっしゃることがあり、この作品の上演にあたり、いろんな思いが詰まっていると稽古初日に話してくださいました。

――本読み(出演者が脚本を読み合わせる稽古)はいかがでしたか?

 これは放送作家たちの会話劇で、いろんなところにギャグがちりばめられているんです。

 アメリカの戯曲なので、アメリカン・ジョークが山ほどあり、三谷さんは日本人向けに上演台本を調整してくださっているのですが、読み合わせでは、「ここもギャグだったんだ!」と初めて気づくようなポイントがたくさんありました(笑)。

――瀬戸さんはKERAさん作・演出の舞台などコメディ色の強い作品にも出演されていますが、ニール・サイモン&三谷幸喜作品とはまたスタンスが違うのでしょうか?

 そうですね……。たとえばKERAさんの『陥没』(2017)などはアホな子の役だったので、台本のまま素直に演じることが笑いにつながりました。

 でも今回は、登場人物たちが、相手を笑わせようとして面白いことを言い合うんです。

 計算された笑いというか、「ウケるだろ?」と思いながら言ってみたことが滑って笑われる場面もあって、さじ加減が難しそうです(笑)。

――なるほど!

 それから、オフィスが舞台なので、他の人が話している間、無言で作業をしなければいけない場面も多い。

 そういうセリフのないときの芝居がすごく大事になるような気がしています。

 ちゃんと舞台の上で登場人物たちが生きていないと、お客さんは冷めてしまいますから、責任重大ですよね。

2020.11.22(日)
文=黒瀬朋子
撮影=榎本麻美
スタイリスト=田村和之
ヘアメイク=小林純子