毎回変化させた最後の場面のセリフ

──そんな数々の恥ずかしさを乗り越えて舞台に立たれていたわけですね(笑)。現代的なお芝居の仕方は三谷さんや八嶋さんから教わったとおっしゃっていましたが、どんなことが印象に残っていますか。

 まず、三谷さんに言われたことですごく勉強になったのは、セリフの言い方です。声の大きさや高さをどう変化させれば伝わりやすくなるかとか。

 あと、接続詞を強調することでその前後の言葉が際立つというのは、今までは逆だと思っていたので、教わらなければわからないことでした。おかげで、少しはリアルなお芝居に近づけたかなと思います。

 八嶋さんからも教わったことはたくさんあります。そもそも、八嶋さんが自分に付いてくださったのは、「新作をやるのは初めてだから教えてやってくれ」と三谷さんが頼んでくださったからで、もう本当に付きっきりで教えてくださって感謝しかありません。

 そのなかでも一番印象に残っているのが、最後の場面のセリフの言い方を毎日変えてみようと言われたことでした。そのシーンの数分前に袖で八嶋さんと会うのですが、そこで「今日はあのセリフをこう言ってみて」というアドバイスがあって、25日間本当に毎日変えて言っていたんです。

 練習なしのぶっつけ本番でしたから、やるのには勇気がいって、とくに、相手を見ずに客席に向かって言ってみてと言われたときは思い切りが必要でした。シネマ歌舞伎に映っているのがどのパターンなのかは、自分でも覚えてないんですけど(笑)。

2020.10.03(土)
文=大内弓子
撮影=佐藤 亘
スタイリング=中西ナオ
ヘアメイク=AKANE