一般家庭から歌舞伎俳優へ 中村鶴松さんのヒストリー

 歌舞伎には、由緒ある歌舞伎の家に生まれた人が受け継ぐという世襲制のイメージがあると思いますが、「部屋子(へやご)」という制度があることを知っていますか?

 部屋子とは、子役として出演していたことなどがきっかけで、小さいうちから歌舞伎俳優のもとに預けられて行儀作法や芸を学ぶ立場の俳優です。

 例えば、女方を代表する名優の坂東玉三郎さんは14代目守田勘弥の部屋子となって後に芸養子になりましたし、市川右團次さんも3代目市川猿之助(2代目市川猿翁)さんの部屋子となって市川右近を名乗って活躍を遂げ、2017年には関西を代表する名跡を襲名しました。

 現在25歳の中村鶴松さんも、師匠である18代目中村勘三郎にその才能を見出されて、10歳の時に部屋子となり、現在に至ります。一般家庭に生まれた鶴松さんが、歌舞伎の世界に入ったのは、どのような出会いと経緯があったのでしょうか?

「僕の両親は共働きだったので、親の意向で習い事として3歳で児童劇団に入りました。

 そこではタップダンスやバレエや日本舞踊などを教わっていたのですが、断片的な記憶しかありません。

 5歳の時に歌舞伎の子役のオーディションを受けて、2000年5月の歌舞伎座で上演された『源氏物語』に本名の清水大希の名前で初舞台を踏みました。

 共演させていただいた玉三郎さんと海老蔵さんがきれいだなと思ったことを覚えています」

2020.07.08(水)
文=山下シオン
撮影=佐藤 亘
スタイリング=木村厚志
ヘアメイク=AKANE
衣装クレジット=シャツ 19,000円、Tシャツ 9,000円、デニム 24,000円/YAECA (YAECA APARTMENT STORE)