ギャグシーンを演じるのは「恥ずかしかった」

──描かれているのは、江戸時代後期、ロシアまで漂流することになってしまった船の乗組員たちが再び日本の地を目指す物語。そのなかで染五郎さんは一番若い磯吉役を演じられました。主人公で船頭の大黒屋光太夫をお父様の松本幸四郎さんが演じておられたので、親子という関係を使って笑わせる場面も、三谷さんが作っておられましたね。

 はい。いち早くロシア語を覚えた磯吉が、みんなにロシア語講座を開く場面があるんですけど、光太夫だけに強くキレるところがあって。気持ちよかったです(笑)。

──ほかにも、吉本新喜劇のようにギャグを言ったりコケたりするところがありました。そういうお芝居をするのはいかがでしたか。

 恥ずかしかったです(笑)。性格的にギャグを言うようなタイプではないので。

 ただ、父がお笑いが大好きで、それこそ吉本新喜劇や、ザ・ドリフターズの番組を、自分も小さい頃から観ていたんです。

 そのときに父がいつも、「笑わせるのは間が大事だから、間を見て」と言っていたので。それは自分でもちょっと意識してやっていたかもしれません。

──旅の途中で磯吉が恋に落ちるアグリッピーナとのシーンも見どころではないかと思いますが、市川高麗蔵さんとのラブシーンはいかがだったでしょう。

 あのシーンが一番恥ずかしかったです(笑)。

2020.10.03(土)
文=大内弓子
撮影=佐藤 亘
スタイリング=中西ナオ
ヘアメイク=AKANE