認可保育園を見学に……そこはまさにパラダイスだ!

 4月の認可の募集は案の定落選。来年度まで入れない可能性が高いが、志望する園の見学はしておいてほしいと役所に言われた。彼女持ちの男しかいない合コンに行くような気持ちで、私は近所の認可保育園の門を叩いた。……そして打ちひしがれた。あまりにも環境がいい。広くて日がよくあたる、白木で作られた保育室。広い庭。一人一人に用意された机と椅子。全身を使って室内遊びできる体育室。さんざめく笑い声。楽園だ。幼児のパラダイスだ! でも入れない!

 認可保育園は福祉施設なので、生活が立ちゆかない人の子どもから順に入ることになっている、と役所の人は言った。それは当然だし、変えてはいけない原則だ。しかし、家庭の状況によって立派な施設で見てもらえる子とそうでない子に分けられてしまうことには少し割り切れなさを感じる。今ある認可の質を下げて数を増やせとは全く思わないし、認可外でも入れるだけラッキーだってわかっているけれど。

 現在、入園から半年以上経ったはるまきはお友達もできてすっかりこなれた保育園児だ。覚えてきた謎の歌やダンスを家で得意げに披露する姿から、園での充実っぷりがうかがえる。しかし時々、迎えの時にそっと中をのぞくと、ひとり柱にもたれかかってぼ~っとしていたり、お友達と離れたところに座り込んでいる日もあり、そのたび私の胸は千々に乱れ「カワイソウ」という言葉が頭をよぎる。気にしすぎなのはわかっている。そんな時もあろう。お知らせ帳には楽しく遊んでいる様子が綴られている。心配することなど何もないのだと、私は私に言い聞かせる。そして私を見てニコニコと出てくるはるまきを抱きしめて、ほっぺたの匂いを嗅ぐ。

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2013.01.20(日)
text:Yukari Takinami
photographs:Nao Nakai

CREA 2012年11月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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