当たり前だと思っていた日常を失って戸惑っている人、困難に直面している人、自分が大切にしているものは何か、揺らぎ、悩んでいる人へ。

 こんな時だからこそ、より響く言葉があります。

 コロナ禍で変容してしまった社会のなかで、これからどう生きていくのか――。

 角幡唯介の『極夜行』や須賀敦子の『ヴェネツィアの宿』など、 今、届けたいエッセイ・ノンフィクションをセレクトしました。文藝春秋の担当編集者からの熱いメッセージとともに──。


余命を見つめて生きた人
『はなちゃんのみそ汁』

“千恵はいっつも言いよったもんね。
「人間、いつどうなるかなんて誰にも分からん」
 だから、玄関を出るときはいつも絶対、笑顔で。けんかしていても、朝出かけるときは仲直り。
「きりかえ、きりかえ」”

【本のポイント】
「この言葉は、5歳の娘・はなちゃんを遺し、33歳にしてがんで亡くなった千恵さんの、生前のモットーです。余命を見つめて生きた人の、鮮やかさと深さが今、身にしみます。

 新型コロナウイルスがあってもなくても、誰だって致死率100%。いつどうなるかなんてわからない! だから笑顔で、きりかえ、きりかえ。ままならない生活で、いらだつ自分へのおまじないです」(担当編集)

【あらすじ】
毎朝、早起きしてみそ汁をつくること――それが癌で逝った33歳の母と5歳の娘の交わした「約束」だった。生きることは食べること。20代で乳がん、結婚・出産をへて肺がんに転移という過酷な運命のなか、千恵さんがあかるい博多弁で綴った人気ブログ「早寝、早起き、玄米生活」の内容を中心に、 夫の手記と娘の手紙で構成された家族の記録。2014年にドラマ化(主演・大倉忠義)、2015年に映画化(主演・広末涼子)された。

はなちゃんのみそ汁

著者 安武信吾・千恵・はな
文春文庫 580円
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はなちゃんのみそ汁特設サイト
https://books.bunshun.jp/sp/hanamiso

2020.05.28(木)
文・撮影=文藝春秋