江戸っ子が愛した隅田川で舟遊び
海の匂いとともに楽しむ圧巻の橋
江戸っ子から「大川」と呼ばれ親しまれていた隅田川。そこは何もかも別格の大河でした。門井さんも隅田川の趣は印象的だったようです。
「ひとくちに川と言っても、それぞれ個性がある。隅田川は水位があって、立つ波も違い、海の匂いがしました。昔の江戸は内陸まで、もっと海の匂いがしていたんでしょうね」
架かる橋のスケールも圧巻。土木学会から賞を受賞している両国大橋は伸びやかでダイナミック。重要文化財の清洲橋は美麗でエレガントなつり橋。ほかにもモダンなデザインが際立つ新大橋、二階建ての隅田川大橋と、まるで“橋のショーケース”です。
船も百花繚乱。観光船だけでなく、消防庁の水難救助訓練にも遭遇しました。宮さんが「みなさん、もし川で溺れたら”海猿”(海上保安庁)が助けに来てくれると思っているようですが、ここ”川”での救助活動は消防庁がご担当ですから」と微笑みながらご紹介。
永代橋の手前で船は再び、日本橋川に戻ります。永代橋は5代将軍、徳川綱吉の50歳の記念に架けられたという橋。昔はここから先に一面、江戸湊は広がっていたのです。
江戸時代に江戸湊の出入り口とされた湊橋をくぐり、フィナーレは江戸橋。首都高の“江戸橋ジャンクション”と橋のインスタレーションのような風景が、国外でも話題を集めているそうです。
ようやく日本橋に到着。ボートから降りた門井さんが
「知らず知らず元の場所に戻って来ましたね。首都高あり、地下鉄あり、ひと通り陸上交通を水の上から見た気がします。“水の街・東京”で、“陸の街・東京”というものの再発見をしたような……不思議な気分です」
と振り返ります。
やはり気の短い江戸っ子好みでしょうか。水上は地上と違って、渋滞知らずでストレスフリー。江戸の水ネットワークが気づかせてくれることは尽きないようです。
お江戸日本橋舟めぐり
江戸東京再発見コンソーシアム
予約の受け付けは電話のみ。
電話番号 03-3668-0700
予約受付 9:00~12:00、13:00~17:00
※土・日曜・祝日は休み
料金 日本橋川コース(約1時間、2,500円)、神田川コース(約1時間30分、3,500円)
※消費税、ガイド料、特製古地図のお土産を含む。各回、定員10名まで。
http://www.edo-tokyo.info/ship/
門井慶喜(かどい よしのぶ)
1971年、群馬県生まれ。同志社大学文学部卒業。2003年「キッドナッパーズ」でオール讀物推理小説新人賞を受賞しデビュー。16年『家康、江戸を建てる』で直木賞候補に。16年『マジカル・ヒストリー・ツアー』で日本推理作家協会賞、18年『銀河鉄道の父』で直木賞受賞。20年2月、建築家・辰野金吾をモデルにした小説『東京、はじまる』を刊行予定。
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2020.01.03(金)
文=上保雅美
撮影=佐藤 亘