国際コンクールで
驚いた文化の違い

 類いまれな集中力で実力を伸ばし続け、12歳のときプロの音楽家との共演を果たす。

「『ツィゴイネルワイゼン』を初めてプロのオーケストラと共演したのですが、とても緊張したのを覚えています。

 指揮は大友直人先生で、オーケストラは京都市交響楽団でした。いつも客席から見ていた京響と同じステージに立っているのが夢のようで……怖かったけど、それ以上に嬉しかった。本当に一生懸命やりました。オーケストラにもとても温かく迎えていただきましたね」

 周防さんの演奏には、最初の一音で人を惹きつける閃光のような輝きがあり、自信に裏付けられた華やかさと、限界を設けない勇敢さが感じられる。

 トレモロの機敏さ、レガートの優美さ、ヴィヴラートの妖艶さ……どれも一流ヴァイオリニストに求められるものだが、そのパーフェクトな音楽的知性を手に入れるためには、尋常ではない忍耐が求められる。

「のほほんとしているように見えて、負けず嫌いなところがあるのかも知れません。母親からは『図太い』と言われます(笑)。田舎でのびのびと育ったので、性格には自由なところがありますし……あと、ヴァイオリンと出会って2年後に、ようやく習わせてもらったという嬉しさが、つねに練習する喜びや原動力になっていたと思います」

 国内コンクールでは2011年に東京音楽コンクールで第1位と聴衆賞、2012年に日本音楽コンクール第2位と聴衆賞を受賞。将来を期待される才能を花開かせていく。

 国際コンクールでは2010年に伝説のヴァイオリニストの名を冠したダヴィッド・オイストラフ国際ヴァイオリンコンクールで最高位に輝き、2016年にも演奏家の登竜門であるヴィエニャフスキ国際ヴァイオリンコンクールに入賞し、審査員特別賞を得た。

「国際コンクールを受け始めた頃に驚いたのは、参加者がお互いに演奏を素直に認め合って『おめでとう』『素晴らしいね』と声をかけてくることでした。国内のコンクールではなかったことで、競い合う中で音楽の良さを讃え合うという姿勢に衝撃を受けたんです。緊張感がある中でも、リスペクトし合えるのは素晴らしいことだと思いました。

 ヴィエニャフスキ・コンクールも、何より参加者の錚々たる顔ぶれが感動的で……同世代の素晴らしいヴァイオリニストたちの演奏を目の前で聴くことができました。ずっと指導してくださっている小栗まち絵先生が日本人で初めて入賞したコンクールでもあり、参加できたことが純粋に嬉しかったんです。

 ファイナルではブラームスのヴァイオリン・コンチェルトを弾きましたが、指揮者の方もオーケストラも素晴らしく、聴衆もとても温かかったので、ポーランドという国が大好きになりました。それ以来、外国に行くときにはポーランド経由を選ぶことが多いんです(笑)。

 コンクールは、もちろん結果を求めて行きますけど、それ以上に自分の音楽を世界の人たちに聴いていただけるのが大きい。そこで知り合った方たちとは仲良くさせていただいていますし、短期間でたくさんのプログラムを演奏するのも勉強になりました」

2019.10.09(水)
文=小田島久恵
撮影=深野未季