日本で周防さんの生演奏を
聴くチャンスは?

 コンクール後も精力的な活動を続け、中でも冒険的な試みとして大きな注目を浴びたのが、2017年に行われた東京オペラシティでのオール無伴奏演奏会だった。

 「バッハからコンテンポラリーへ」という統一テーマで演奏家が取り組むコンサート・シリーズで、周防さんもバロックから現代曲までハイレベルの曲(それもすべて無伴奏)を選び、クオリティの高い演奏を披露した。筆者もその「現場」にいたが、誇張なくそれは「神懸かり的な時間」だった。

「すべてリサイタルを無伴奏の曲でやり切るのは精神力もいりましたし、あんなプログラムは初めてでした。今出来ることの限界を超えてみたいなと思い、若いうちだから出来ることをやってみようと。大きな精神力を要しましたが、鍛えられてよかったです。演奏家として、つねに目標は大きく、と思っているんです」

 2019年度はシャネル銀座のネクサス・ホールで行われる「シャネル・ピグマリオン・デイズ」の参加アーティストに選ばれ、年6回のリサイタルを行う。既に4回のリサイタルを終え、残る10月と11月にも意欲的なプログラムが組まれている。

「シャネルのリサイタルでは、ブラームスのヴァイオリン・ソナタ3曲すべてを演奏しますが、4月の3番、8月の第1番に続き、10月には最後に2番を演奏します。

 共演のピアニストの方たちも素晴らしいですし、シャネルのスタイリッシュな空間で弾けることを嬉しく思っています。プライベートではファッションも大好きで、絵を描くことや細かい手作業も大好きなんですよ」

 音楽でしか伝わらないことを伝えたい、と周防さん。

「言葉では伝えられないことも、音楽はダイレクトに伝えることが出来ると思っています。そういうものを伝える演奏家になりたい。そのためにも自分に限界を設けずに、難しいと思えることもやっていきたいと思っています。

 音楽は見える世界も変えられるんです。スイスに留学していたとき、駅から15分くらいかけてアカデミーに通っていたんですが、ある日マーラーの『交響曲第5番』のアダージェットを聴きながら歩いていたら、普段見る景色の色彩まで変わって見え、いつもは見えないものまで目に入ってきたのです。不思議な感覚でしたが、それが音楽の魅力なのではないかと思います」

シャネル・ピグマリオン・デイズ 2019 グランドフィナーレ

https://chanelnexushall.jp/program/2019/gf/
応募締切日:2019年11月11日(月)

シャネル・ピグマリオン・デイズ 2019 室内楽シリーズ

https://chanelnexushall.jp/program/2019/chamber_nov/
応募締切日:2019年10月10日(木)

小田島久恵(おだしま ひさえ)

音楽ライター。クラシックを中心にオペラ、演劇、ダンス、映画に関する評論を執筆。歌手、ピアニスト、指揮者、オペラ演出家へのインタビュー多数。オペラの中のアンチ・フェミニズムを読み解いた著作『オペラティック! 女子的オペラ鑑賞のススメ』(フィルムアート社)を2012年に発表。趣味はピアノ演奏とパワーストーン蒐集。

Column

小田島久恵のときめきクラシック道場

女性の美と知性を磨く秘儀のようなたしなみ……それはクラシック鑑賞! 音楽ライターの小田島久恵さんが、独自のミーハーな視点からクラシックの魅力を解説します。話題沸騰の公演、気になる旬の演奏家、そしてあの名曲の楽しみ方……。もう、ときめきが止まらない!

2019.10.09(水)
文=小田島久恵
撮影=深野未季