「夢グループ」の新聞広告の衝撃
ヒロシこと黒沢博は、黒沢年雄の実弟である。
なお、2000年に黒沢年男から年雄に改名しているが、煩雑なので本記事内では年雄で通す。どっちにしてもマン・オブ・ザ・イヤーである。いつか「TIME」誌の表紙を飾ってほしい。
と、ここで、筆者が大学時代に合宿免許の教習所で知り合って以来の腐れ縁である下井草秀というエディター兼ライターから情報が寄せられた。
黒沢兄弟(L⇔Rではない方)の動向を常にウォッチし続けてきたこの男は、最近、こんな新聞広告を目にしたという。
「時には娼婦のようにゆかいなじいちゃん」
虚を衝かれた。このじいちゃんが時に行う娼婦のようにゆかいな振る舞いとは、いったいどんなものなのだろう?
俺が大きく広げた想像の翼ははばたき続け、琵琶湖の中ほどまで飛んで行ってようやく着水し、鳥人間コンテストの優勝を狙う。
しかし、夢グループがお送りするこの広告全体を見渡した時、その疑問はあっさりと氷解した。
この文言は、単に「時には娼婦のように」と「ゆかいなじいちゃん」という黒沢年雄の持ち歌2曲を列挙したものに過ぎなかったのである。
それは、他の歌手に関する紹介を見れば明白だ。
山本リンダなら「狙いうち」と「どうにもとまらない」の2曲が、冠二郎なら「炎」と「旅の終わりに」の2曲が連ねられている。
だが、それを知ってなお、「時には娼婦のようにゆかいなじいちゃん」を実写化すると想定した時、この黒沢年雄の表情は100%の模範解答であると思える。百点満点だ。
こうなると、「時には娼婦のように」と他の黒沢年雄のシングル曲のタイトルとの喰い合わせも確かめたくなるところである。
「時には娼婦のように僕についておいで」
「時には娼婦のように燃えつきて」
「時には娼婦のように今夜は送らないぜ」
「時には娼婦のように酒とバラの日々に」
「時には娼婦のようにて・れ・な・い・で -Don't be so shy-」
意外に馴染む組み合わせが多い。
しかし、一番理に適った納得度の高いマリアージュはこちらである。
と、ここまでさんざん「時には娼婦のように」を肴に縷々駄文を連ねてきたわけだが、そもそも、この楽曲について知らない読者も多いに違いない。
2019.03.28(木)
文・撮影=ヤング
写真=下井草 秀、文藝春秋