「3年目の浮気」に始まる
壮大なサーガとは?
![相方のキーボーの本名は山田喜代子。解散後はいろいろと苦労を重ねることになる。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/4/e/-/img_4e7761e6f41107e2b2bab6e4cb03e9df124978.jpg)
「3年目の浮気」と言われてもピンとこない平成生まれには、6年ほど前にトリンドル玲奈とともにソフトバンクのCMで「ヒロシ&タダ」として「3年タダの学割」なる替え歌を披露していた男性歌手といえば分かるかもしれない。
分からないと言われるとこの後の文章はまるごと無駄になるので、頼む、分かれ、分かってくれ。
なお、「3年目の浮気」には、いくつかの続編が存在する。
まずは、同じくヒロシ&キーボーが二匹目の泥鰌を狙い、「3年目の浮気」ヒットの高揚感覚めやらぬ翌83年に「5年目の破局」をリリース。
![この曲をU字工事がカバーし、間奏の小芝居において「ごねんめごねんめー!」と叫んでくれればいいのにと心から思う。……すみません、「心から」はちょっと大袈裟でした。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/0/8/-/img_089ce7bf20f0dcec0e83158b05757ceb89268.jpg)
やはり不貞を経た夫婦関係は修復できなかった模様である――と思わせる曲名だが、歌詞を読むと、何とかかんとか水際で離婚は回避されたようにも解釈が可能となっている。いわゆるオープンエンディングだ。
そして、「5年目の破局」の直後、立て続けに発表したシングルが「危険なクラス会(7年目の洒落)」。
![このタイトルは、91年に佐賀市で起きた同窓会大量殺人未遂事件を想起させる。中学時代にいじめを受けていた犯人は、自ら幹事を務め同窓会を開催することで級友を一カ所に集め、ヒ素入りビールを飲ませるという目論見だったが、息子の様子を不審に思った母親が警察に通報し、すんでのところで惨劇は回避された。……しかし、この曲のモチーフはその事件ではないので安心してください。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/3/0/-/img_30e4c44be84feb58751b69ff69751757107961.jpg)
タイトル通り、中年がぼんやり抱きがちなある種の淡く甘くせつなく手前勝手な妄想を歌い上げている。
2017年には、ヒロシが相方をチェンジし、ヒロシ&ナオミとして「30年目の本気~懲りない男のPART2」をリリースする。なお、ナオミといってもキャンベルではない。ワナメイクラブワナメイクラブとか囁いてない。
![「30年目の本気」という命名センスには、「10万56歳」と自称するデーモン閣下に通ずる発想を感じる。開き直るその態度が気に入ったのよ。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/d/8/-/img_d805653abbd36751b57458912e3d59f769999.jpg)
還暦過ぎてまたもや浮気に走った夫が、これからは本気であなたを愛しますと妻に誓う内容だ。
ここまでくるとちょっとしたサーガ、大河ドラマである。こうなったら、23世紀に「300年後も元気」とかいうシングルをリリースしてほしい。俺もそれまで長生きみそ汁とか飲んだりして生き続けるよ!
なお、「3年目の浮気」という曲名はマリリン・モンロー主演の映画『七年目の浮気』から採られたものであることは明白である。
あー、こういうこと書いてると、俺は飯坂温泉「ホテル聚楽」に行きたくなるし、高田馬場「スズヤ」に質入れしたくなるが、平成生まれのみなさんにおかれましてはここ数行をすっぱり忘れ去っていただいて結構です。
が、それにしても、「3年目の浮気」というタイトルのキャッチーさには魔力がある。まさに声に出して読みたい日本語なのだ。
2019.03.28(木)
文・撮影=ヤング
写真=下井草 秀、文藝春秋