アヴェダの香りは自然の恵み
心身に深く働きかける
自然の力を最大限に活かし、地球環境を守る立場からオーガニックにもこだわるアヴェダの製品にあって、大切な要素となっているのが独特のアロマ。
直接感覚に訴えかける素晴らしい香りをディレクションしているのが、専属調香師のガイ・ヴィンセント氏だ。
「香りはとてもパワフル。一瞬で昔の感覚に戻ることもできるくらいだから」
そう言って彼が差し出してくれたのは、温かくて優しい香りをまとったムエット。
聞けば、ミモザ、ユーカリなどをブレンドしたオリジナルの香りだそう。
「子どもの頃、僕はオーストラリアの大自然の中で暮らしていて、アカシアの森には黄色い花がたくさん咲いていたのを覚えている。
だからミモザの香りを嗅ぐと、さんさんと降り注ぐ光の中、元気に駆け回っていた子ども時代の自分にいつでも戻ることができるんだ」
アロマをほぼ独学で身につけたというガイ氏の経歴はなかなかユニークだ。
もともと故郷オーストラリアの小さなビール工場で働いていたが、ある時、仕事で訪れた日本人女性とビールの味や香りについて話をしていたところ、「パトリック・ジュースキントの『香水』という小説を知ってる?」と尋ねられたという。
「すぐ読んでみたら、香りについての描写が素晴らしくてすっかり心を奪われてしまった。ストーリー自体は怖い内容なんだけれど(笑)。
それから自然療法を学び、やがて持ち物をすべて売り払ってバックパッカーになり、エッセンシャルオイルを知るための旅に出ることにしたんだ」
世界に飛び出した彼は、6大陸すべての自然原料の作り手や研究所を訪れ、実地で天然香料やエッセンシャルオイルについて学んできた。
そして今も、農家や工場へ直接足を運んでは、新しい香りの世界を広げ続けている。
「まだまだ未知の植物もあるし、抽出方法によって新しい香りが生まれることもある。
今考えていることのひとつは、エッセンシャルオイルを抽出したあとの、これまで廃棄されていた素材を活用して新しい価値が生まれるのではないかということ。
香りの新しさだけではなく、髪や肌のためになる成分を発見できるかもしれない。ものすごくクリエイティブでエキサイティングな取り組みなんだ」
2019.03.05(火)
取材・文=嵯峨崎文香
撮影=鈴木七絵