けん玉ギネスと勝手にシンドバッド
後半名場面12

■DA PUMP
「U.S.A.」

 ウッちゃん演じる三津谷寛治に「ドドンパの皆さん」と言われたDA PUMP。出演者全員のいいねダンスは圧巻。こういう時絶対誰よりもノリノリで踊ってくれる松田聖子はアイドルの鑑。

 また紹介MCにて「この曲を踊ってアキレス腱を切る人が多い」という情報を得た。皆さん準備運動は忘れずに。

■AKB48
「恋するフォーチュンクッキー」

 タイでこの曲が大ブームということでBNK48も登場。センターの子が緊張し「紅白、コウハーク……ひーひー」と挨拶が止まってしまい、見ているほうがハラハラ。彼女に必死でサワディーサワディー(こんにちは)と繰り返していた櫻井翔のやさしさよ。

 タイの王女の名が「ウボンラット」である、ということを今回で覚えた視聴者も多かろう。AKB48は毎年歌唱以外のいろんな方向で爪痕を残してくれる。

■三山ひろし
「いごっそ魂
~けん玉世界記録への道、再び~」

 正直自分の歌を捨てけん玉に賭けた彼に「これでええんか」と思ったが、ギネスを達成した瞬間もうそれもアリと感動しコタツを立ちスタンディングオベーションを送ってしまった。

 歌唱中はけん玉を気にしないふりして朗々と歌うメンタル。これぞ「いごっそ魂」! 前回失敗した14番がラッキー7で参加し、終了後涙の抱擁を交わしたというエピソードも胸アツ。

■西野カナ
「トリセツ」

 銀色の衣装がかわいかったがちょっとお疲れ? と思ったら、無期限休業のニュースが飛び込んできた。あざとい女子の生態を生き生きと描いた彼女の歌の世界はカチンとくることも多いが、なんだかんだ言いつつ平成歌謡の代表だった気がするのだ。

 新時代の「トリセツ」を掲げて帰ってくる日もそう遠くはないと信じたい。

■北島三郎
「まつり」

 サブちゃんを待ちわびるあまり前に出過ぎて、サブちゃんが乗っている金のしゃちほこの邪魔になり櫻井翔に服を引っ張られる氷川きよし。審査員席からウキウキと身を乗り出す安藤サクラ。ドアップ過ぎて見切れるチコちゃん。安定の花柳糸之社中の皆さん……などなどいろいろ見どころがあったが、やはりサブちゃんのいのちを振り絞ったような歌唱が全て。

 「平成、まつりだよぉぉぉう」に涙が滝のように!

■松田聖子
「SEIKO DREAM MEDLEY 2018」

 阿部サダヲの「聖子ちゃん」コールが響く中、出だしの「かぜーたちーぬー」の声の低さにSNSがどよどよどよ……。

 それゆえ「天国のキッス」は残念なほどヘブン感が薄らいでしまったが、「渚のバルコニー」はお忍び恋愛的な色っぽさが増すという聞き手をものすごく複雑な気分にする仕上がりに。

■氷川きよし
「勝負の花道
~世界に響く和太鼓SP~」

 DRUM TAOとのコラボ。きよしに1ミリも似ていない風船人形はなぜあんな出来になったのか。衣装の早替えに手間取ったのはハラハラしたが、以前倖田來未も同じようなワタワタがあった覚えが。早替えは想像以上に難しいようだ。

■椎名林檎と宮本浩次
「獣ゆく細道」

 「紅白を見据えて書きましたから」と涼しい笑顔で答えた椎名林檎の大物臭よ……。首が取れそうなほど大暴れしながら歌っているのに音程が全くブレない宮本浩次に驚愕。

■松任谷由実
「私が好きなユーミンのうた
~紅白スペシャル~」

 別室で「ひこうき雲」を歌って終わりかと思いきやホールに出てきて、ユーミンの大ファンというaikoがドド泣き。

 松任谷由実は特に好きでも嫌いでもない私だが客席が一斉に「やさしさに包まれたなら」を歌った時、彼女の凄さに白旗を掲げた。

■石川さゆり
「天城越え」

 布袋寅泰のギターと日本の伝統楽器軍団とコラボ。アップの鬼気迫る表情は待ち受け画面にしたいほど。んもう100万回くらいこの曲を歌ったであろう石川さゆりだが、まだまだ飽きさせないわよ的な意地を見せた渾身の歌唱。

■嵐
「嵐×紅白スペシャルメドレー」

 後半、昭和に押されてボンヤリになっていた「平成最後の紅白」というテーマを、メンバーそれぞれがシッカリ語り本当によくできた人達だと感心した。

 そして先日の嵐無期限活動休止宣言。西野カナといい、平成が去っていく足音がドカドカドカドカ聞こえて心の整理が(泣)。

■サザンオールスターズ
「希望の轍」
「勝手にシンドバッド」

 ユーミンとサブちゃんと桑田佳祐の絡みをにこにこと手拍子しながら見つめるYOSHIKIという、レジェンド揃いの絵面は圧巻。今回の紅白の最大の見どころの一つは桑田さんのサブちゃんリスペクトだったかもしれない。

 紅白の醍醐味は結局「時代を超えた日本を代表するアーティストがともに称え合いワイワイする多幸感」、これに尽きると証明したパフォーマンスでもあった。

2019.02.09(土)
文・撮影=田中 稲
写真=文藝春秋