“千のミナレットの街”をめぐり
市場で土産探し

 コーランが響き、モスクへ祈りに訪れた人々とすれ違うイスラム地区。

 7世紀にアラブ民族が侵攻して以来、イスラムの中心的な役割をなしてきた。イスラム建築めぐりやハーン・ハリーリのスーク(市場)など、異文化体験が待っている。

 祈りの時間にごった返すアル・フセイン・モスクを横目に通り過ぎ、カイロきってのスーク、ハーン・ハリーリへ。

 屋根付きの薄暗い路地に入ると、土産物店がずらりと並んでいる。ツタンカーメンのマスクのミニチュアや、水たばこの器具、金・銀・銅細工のアクセサリーに衣類など、まさに玉石混交。

 たまたま入った香水瓶の店で、クレオパトラやネフェルティティがつけていた香りだとすすめられ、思わず購入。今思えば、どうして彼女たちの香りを知っているのだろう……?

 イスラム地区の南東の小高いモカッタムの丘には、12世紀に十字軍による侵攻を防ぐために造営された城塞、シタデルがある。

 高さ10メートル、厚さ3メートルもの堅牢な城壁の中に点在する、精緻な細工や意匠が美しいイスラム建築が見どころ。

 中でも外壁に白い鉱石のアラバスタ、ドームにシルバーを使ったムハンマド・アリ・モスクは、壮麗なたたずまい。

 スッと伸びたミナレット(塔)は高さ84メートルあり、エジプトでいちばんの背高のっぽだ。高台にあるため、カイロの街を遠くまで見晴らすことができ、うっすらと茶色がかった街に、高層ビル群が連なっている。

 ニックネームの“千のミナレットの街”にも時代の流れは訪れているようだ。

2018.12.31(月)
文・撮影=古関千恵子