「人見知りで、内向きな性格」と自らを評する若林さん。世の中をナナメに捉える彼の心を動かす本、音楽とは? エッセイの書き手としての視点にも注目。


 うまくいかないとか、孤独になるとか。物事が都合よく進まない本を読むと、気持ちが緩みます。

 最近おもしろかったのが村上春樹さん訳、レイモンド・カーヴァーの短篇集『大聖堂』。これといった大事件が起こるわけでもなく、意地の悪いおじさんばかりが出てくるところがいいんですよ。

 藤沢周さんの中年の孤独を描いた作品の数々も好きです。若い人の孤独は絵になるけど、40近くのおっさんの孤独は目も当てられない。

 そんなマイナスのできごとにだって価値がある、というのをうまく伝えているのが、レイモンド・カーヴァーや藤沢さんなんでしょうね。「世の中ってそういうもん」という諦めが、気持ちを楽にしてくれます。

 本を好きになったのは大学生になってからで、きっかけは村上龍さんの作品です。

 最初に読んだ『限りなく透明に近いブルー』はドラッグが出てきたりと、だいぶ悪すぎる展開で、「こんなアウトローでいいんだ」と衝撃を受け、夢中になりました。

2018.10.14(日)
Photographs=Asami Enomoto
Styling=Yukio Fukuda
Hair&make-up=Masae Kobayashi(G・FORCE)

CREA 2018年11月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

101人の本と音楽とコーヒー。

CREA 2018年11月号

人生をちょっと自由にする、心の「スイッチ」
101人の本と音楽とコーヒー。

定価780円

慌ただしい毎日に、ちょっとひと休み。本と音楽とコーヒーを愛する101人に、大切な1冊、1曲、1杯を教えてもらいました。ちょっとだけ自由な気持ちになれたり、自分らしくいられるような、皆さんの心の「スイッチ」をご紹介します。