熟年夫婦の愛の物語は文句なしに泣けてしまう
「キレイなだけの恋愛映画じゃ泣けませんね」と開口一番にLiLiCoさん。「最初に問題があったり、壁があってまっすぐその人を愛せなかったり……っていう要素が、恋愛映画ではすごく大事。出会って、ちょっといいなって思って、結婚して子供作って……なんて、なーんも楽しくないもんね(笑)。恋に落ちました、でも相手は結婚していました、っていう『サヨナライツカ』のような恋愛のほうが思い出に残るし、死ぬときに絶対に思い出すと思うんです」
仕事柄、これまでに観た恋愛映画は膨大な数に上る。その中から選んでくれたベスト10は、LiLiCoさんの恋愛観とも大いに関係しているという。
「『アイリス』のような年を重ねた夫婦の物語にはすごく惹かれますね。まだ私が人生の中で実現していない絆だから。電車の中で、おじいちゃんとおばあちゃんが手をつないでるのを見ただけで泣けてくるんですよ。そのあとに『ちょっと待てよ。これ不倫かもよ?』と妄想する悪魔LiLiCoがいるんだけど(笑)。愛することは簡単なんですよ。でも心から相手を信頼して、末永く愛し続けるというのは本当に難しい。だから『きみに読む物語』の最初のセリフでは号泣しました。『私はどこにでもいる、平凡な思想の平凡な男だ。でもひとつだけ、誰にも負けなかったことがある。命がけである人を愛した』――っていうね」
『歓びを歌にのせて』には、スウェーデンの自宅を訪れてインタビューした監督との思い出が。
「もう70歳過ぎの監督なんですけど、二度目に結婚した美人の奥様がいらして、彼女が人生で初めて見つけた真実の愛だと仰るんです。『君は心の底から愛していると言ったことはあるか?』と聞かれて、『はい』って答えたんですけど……5分後に『いや、ないです』と撤回してしまった。そのやりとりはすごく印象的でした」
「泣ける」映画の中には登場人物が魅力的なラブコメディも。
「『ラブ・アクチュアリー』はもう定番中の定番ですよね。笑いの中にもホロリと涙が溢れてくるエピソードもあって。『ホリデイ』も恋愛以外のいろいろな愛が描かれていて、“人間って可愛いなあ”とじんわり泣けてしまうんですよ」
LiLiCo
1970年スウェーデン・ストックホルム生まれ。日本人の母とスウェーデン人の父をもつ。現在、TBS系「王様のブランチ」をはじめ、タレント、歌手、映画コメンテーターとして幅広く活躍中
2011.08.20(土)
text:Hisae Odashima