なぜネイルアートからダル爪自分塗りに変わったか?
お花畑のような、甘く女っぽくアデやか極まりないネイルアートのブームもピークをすぎ、一転“男色”とも言えるダル色のネイルがトレンドになっているのは、もう気づいていたはず。それが女の意識変化を物語るのは間違いないが、そもそもネイルカラーが、女の意識をそっくり物語るのも、言うまでもなく爪には“自分はこういう女です”というプロフィールがそっくり示されるから。
桜貝の爪にした日は、自分の視覚につねにその桜貝が入ってくるから、「私は桜貝の女、私は桜貝の女」という暗示がかかる。だから仕草や言葉づかいまでが、いかにもな“桜貝の女”になってしまう。
同時に爪色は、自分の体の一部。髪と爪はもうひとりの自分として、他人に自分自身を伝える力もとりわけ大きいのだ。
ネイルポリッシュブルートレイン ¥1890/ADDICTION BEAUTY(8/17発売)
b ゴールドのカラーの上にカーキのトップコートを重ねるとクロコダイル柄が現れる新感覚の2本組ネイル。
ゴールデン ジャングル デュオ ディオール ヴェルニ
¥4200(7/27限定発売)/パルファン・クリスチャン・ディオール
c 限りなく黒に近いネイビーで、女性らしさのなかにも強さのある女性を演出。
ネイルカラーEX P-33
¥1575/RMK Division(8/24発売)
d この秋のトレンドカラー、カーキで指先を美しく。
ラ ラッククチュール No.31
¥3150(7/20限定発売)/イヴ・サンローラン・ボーテ
だから、ベージュピンクのネイルが大全盛だった時は、結婚願望が前のめりに強くなっていたし、血マメ色のネイルが流行った時代は女が男に媚びなくなり、男の言うことはきかなくなったし、ネイルアートの大全盛は言うならば、“自分好き”の時代を象徴した。ピンクのベースに色とりどりの花が咲いたような立体ネイルアートは、結婚は早くしたいけど、私は私の生き方は変えないわという、今どきの女節を語っていた。
じゃあ今のダル色の爪は何を意味するのだろう。男の5人に1人が未婚。紛れもなく男が結婚しなくなった時代と言っていいが、それも草食化ばかりじゃなく、経済的な問題と、未来への不安がプロポーズはもちろん、恋愛さえ尻込みさせているのは間違いなく、こういうダル色の爪は、それなら私があなたを幸せにしてあげてもいいよという意志の芽生えを象徴しているのじゃないか? ダル色を選ばせるのは、ある意味、女の体の中にも息づいている男性ホルモン。男性ホルモンの分泌量が極端に少ない人は、ピンク大好き。ぜったいにダル色のネイルはしない。でもトレンドとはいえ、気づいたら、ダル色の爪をしていた人は、イザとなったら好きな男を養い、自分が幸せにしてあげられる頼もしい女。というか、ダル色をつけると自分が女として強くなれるし、気弱な男への不思議な引力を宿すことになる。
もちろん、男はダル色の爪には本能的に一瞬、たじろぐかもしれない。人間の爪も動物が獲物を獲る鋭い爪の名残り。だから長い爪や赤い爪には、男も射止められる予感をもつからたじろぐが、人生に弱気な男や、自信を失っている男に対しては、この女についていきたいという本能を搔き立てるのかもしれない。
ともかく、爪色を変えると心が切り替わる。ぐずぐずする男と長く付き合っているなら、ダル色をきっちり決めて、運命をとっとと自ら切り開くのもいいかもしれない。爪色を侮っちゃいけない。自分と他人に見せるあなた自身なのだから。
Column
齋藤 薫 “風の時代”の美容学
美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍する、美容ジャーナリスト・齋藤薫が「今月注目する“アイテム”と“ブランド”」。
2012.07.14(土)